「早く帰りたいだけ」 文系出身の課長が進めた加古川市のDX

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栗林史子
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 1人10万円を配る特別定額給付金やワクチンの予約で自治体の窓口が大混乱するなど、コロナ禍で明らかになった行政のデジタル化の遅れ。そのさなか、素早くオンライン申請の体制を整えた兵庫県加古川市の取り組みが注目を集めた。きっかけは、申請用紙に埋もれる同僚を見ていられなかった一人の職員の進言だった。

 昨年春、兵庫県加古川市のスマートシティ推進担当課長の多田功さん(47)は後輩に思わず声をかけた。「データで来ているなら、データで処理すれば?」。後輩が、政府の専用サイト「マイナポータル」経由できた特別定額給付金のオンライン申請を1件ずつ紙に印刷し、振り込みのための別のシステムに打ち込んでいたからだ。

 国がすすめたマイナポータルでの申請だが、確認や処理は各自治体の裁量に任せられていた。誤入力の確認に追われたり、マイナポータルとの接続がうまくいかなかったりして、受け付けを休止したり、大幅に遅れが出ている自治体も相次いでいた。

給付金支給、必要な情報は

 直接の担当ではなかったが、多田さんはマイナポータルからのデータをそのまま自治体側のシステムに取り込み、振り込みを完了できるようなシステムを市販のソフトを使って組んだ。職員は情報を確認するだけで済み、大幅な手間の削減になった。

 5月からは郵送での申請の受け付けが始まった。市内全11万世帯の大部分が利用するとみられ、大量の申請用紙をどうデータ化するかが課題だった。AIによる文字読み取り機も試してみたが、精度の問題で実用には耐えられそうになかった。

 「職員が手打ちする情報は、少ない方がいい」と考えた多田さん。ただ、よく考えれば、申請書に書いてもらう名前や住所などの情報は、市がもともと持っているものだ。「新しく必要な情報は、ほぼ口座番号だけでは?」。加古川市には以前から、申請書などに任意のIDを割り当てる習慣があった。申請書にはそのIDを読み取れるバーコードを印字、読み取り後は口座番号を入力すれば完了するシステムを作った。

 その日、帰宅後にふと思った…

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