コウゾを丹念に「へぐる」 今井友樹監督、庶民の和紙づくり映画に

高木文子
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 土佐和紙の原料・コウゾを栽培する山里の暮らしを見つめたドキュメンタリー映画「明日をへぐる」が、今月から全国公開される。岐阜県白川村出身の映画監督、今井友樹さん(41)の最新作。「かつては、生活に使うための和紙は地元で栽培され、すかれていた。岐阜県の原風景とも重なるはずで、生活の足元を見つめ直すきっかけになればうれしい」と話している。

 今井さんは、高知県いの町の吾北地区でコウゾを栽培、加工する住民の暮らしを中心に、昨年冬から今年春にかけて撮影した。

 タイトルにある「へぐる」とは、コウゾの表皮部分をそぎ取る作業をさす方言。紙すきから和紙の活用まで膨大な手間と時間をかけて品質を高める姿や、山里の変化を通して、社会の「豊かさ」とは何かを問いかけた。

 地区の人口は減り続け、受け継がれた技術を後世に伝えられるか危ぶまれる現状だが、「皆、若い者は稽古せな、いかんぞね」と丹念に包丁を動かす90代の女性の言葉が響く。

 今井監督は、東濃地方に伝わるカスミ網猟をテーマにした「鳥の道を越えて」(2014年)で、キネマ旬報ベスト・テンの文化映画部門第1位になった。18年には、日本の精神医療の基礎を築いたとされる精神科医の足跡をたどる「夜明け前 呉秀三と無名の精神障害者の100年」を制作した。

 今回の作品が劇場公開作品としては3作目になる。吾北地区の住民有志でつくる「上東を愛する会」などの協力を得て制作し、資金はクラウドファンディングで募った。今井さんは「和紙は『千年残る』とされる。コウゾを育てる人々を通して、人間の一生をはるかに超えた長い時間軸も見つめてほしい」と話す。

 作品は73分。9月11日からポレポレ東中野(東京)、10月に京都、大阪で公開する。神奈川と、名古屋シネマテーク(名古屋市千種区)でも年内に上映予定だ。(高木文子)