「私ね、生活保護に救われたんですよ」天職得た男があえて話す理由

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田島知樹
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 8月中旬の早朝、スマートフォンが鳴った。

 国際番号が画面に表れていた。出るといきなり「ニュース見た?」。独・ライプチヒからかけてきた高野昭夫さん(60)の声は震えていた。

 すぐに悟った。この数日前、「メンタリスト」のDaiGo氏がYouTubeで「生活保護の人たちに食わせる金があるんだったら猫を救ってほしい」などと発言したことに怒っているのだと。

 「生活保護があったから今の私がいるんだ」

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バッハ資料財団がライプチヒで開くバッハ音楽祭の様子=高野昭夫さん提供

前任地で知り合った記者に

 高野さんは、バッハが後半生を過ごしたライプチヒにある研究拠点、バッハ資料財団で広報を務めている。バッハの音楽を愛する高野さんにとって、夢のような仕事だ。

 ここまでは、長く、苦しい道のりだった。

 大学卒業後、バイトでお金をためては、ライプチヒへ通った。一度は定職に就いたが、なじめずに半年で離職した。2年後、貯金は底をつき、うつ病を患った。栄養失調になり、救急車で運ばれることもあった。

 精神科の主治医の勧めで生活保護を受けた。36歳の時だ。「これで食えるんだ」と希望が持てた。

 しばらくして、自宅に航空券が送られてきた。かつてライプチヒで世話になった牧師らからだった。すぐに現地に飛び、バッハ資料財団を訪れる。何でもやると頼み込み、チラシ配りのバイトをもらった。天職への道が開けた。4年間受給した生活保護が終わった。

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高野昭夫さん(中央)=高野さん提供

 高野さんの故郷の富山は私の前任地。帰国時に知り合い、何度か会ううちに生活保護の話も聞いていた。今こそその体験を多くの人に伝えるべきだと思い、記事を書いた。

記事の後半では、高野さんが故郷での音楽会で語っていること、そしてなぜDaiGo氏の発言に怒ったかを書きます。

マイク握り「私ね、生活保護に…」

 厚生労働省ウェブサイトの「…

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