全盲女性の逸失利益「全労働者の8割」 広島高裁判決、社会情勢考慮

戸田和敬
[PR]

 高校時代に車にはねられた全盲の女性が、将来得られたはずの「逸失利益」について、健常者と同水準の支払いなどを運転手に求めた訴訟の控訴審判決が10日、広島高裁であった。金子直史裁判長は、全国の労働者の平均賃金の「8割」が妥当だとする判断を示した。「7割」とした一審判決を変更して上積みした。

 逸失利益を巡っては、障害の重さに応じて、健常者の平均賃金などから一定割合を差し引いたり、まったく認めなかったりする判決もある。社会情勢の変化や個別の事情などを具体的に検討し、「8割」とした今回の判決は、今後の逸失利益の算出に影響しそうだ。

 金子裁判長は、厚生労働省の統計をもとに、身体障害者の平均賃金は全国の労働者の約7割にとどまっているとし「障害のない人と比べ、差があると言わざるを得ない」と指摘。ただ、障害者の雇用状況やITを使った就労支援などの現状を踏まえれば、身体障害者が今後、健常者と同じ賃金条件で働ける社会の実現が徐々に図られていくことが見込まれるとした。

 その上で、原告の新納(にいの)茜さん(30)=山口県下関市=は職業見学や大学見学に参加したり、多数の詩を作ったりするなど、能力向上に積極的だったことなどを考慮。逸失利益について、運転手側は全国の労働者の平均賃金の「57%を超えない」と訴えていたが、8割が妥当だと結論づけた。

 新納さんは山口県立下関南総合支援学校(旧県立盲学校)の高等部2年だった2008年5月、市内の横断歩道を渡っていた際に車にはねられ、頭の骨を折るなどの重傷を負い、記憶力や集中力が低下する高次脳機能障害などが残った。18年に損害賠償を求めて提訴し、「障害がない人と同様に働くことに支障はなかった」などと訴えていた。(戸田和敬)

 判決を受け、新納さんは広島市内で記者会見し「(逸失利益が全労働者の)8割では、本当は全然足りない。障害者が健常者と同じような扱いの社会になることを望む」と話した。

 新納さんの代理人で、自身も全盲の大胡田(おおごだ)誠弁護士(第一東京弁護士会)は「1%でも減額されたなら差別だ。決して評価できない」と強調。健常者と障害者との間に不当な格差があるとし「障害者も、配慮を受ければ健常者と同様に仕事ができる。健常者と同じ『10割』という判決を望んでいたため、残念だ」と述べた。