韓国大統領選の野党最有力候補、捜査開始 前検事総長の尹氏

韓国大統領選挙2022

ソウル=鈴木拓也
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 韓国の捜査機関「高位公職者犯罪捜査処」(公捜処)は10日、尹錫悦(ユンソクヨル)前検事総長に対し、職権乱用や公職選挙法違反など四つの容疑で捜査を開始した。検事総長時代から文在寅(ムンジェイン)政権と対立してきた尹氏は、来年3月の大統領選で保守系最大野党「国民の力」の最有力候補になっている。疑惑を一貫して否定しているが、捜査の行方次第では、大統領選の構図に大きな影響を与える可能性もある。

 公捜処が捜査に着手したのは、尹氏が検事総長だった昨春、与党政治家の立件を狙い、野党議員に告発を促すよう自らの側近だったとされる検事に命じたとされる疑惑。韓国メディアが最近報じていた。

 公捜処関係者によると、尹氏と元側近とされる検事が捜査対象になっている。公捜処は10日、この検事と、検事から告発を促されたとされる野党議員の自宅や国会事務所など関係先を家宅捜索した。野党議員は現在、尹氏と同じ国民の力に所属する。公捜処関係者は強制捜査に踏み切った理由について「(疑惑が)事実なら重大な犯罪のため、証拠隠滅の懸念が大きかった」と説明した。

 公捜処は、文政権肝いりの検察改革の一環で今年1月に発足。検察が担ってきた政治家や官僚らを対象とする捜査権が移された。トップの公捜処長は事実上、政権与党の意向で決められる。

 尹氏はこの日、疑惑について「(検事総長時代に部下から)全く報告されておらず、知り得ない」と否定。捜査について「選挙の度に登場する政治工作だ」と批判した。国民の力も、所属議員への強制捜査に猛反発。党幹部は「家宅捜査は適法な手続きを経ていない。公捜処長や捜査官らを職権乱用などの容疑で告発する予定だ」と述べた。

 世論調査機関リアルメーターが9日に発表した次期大統領を問う調査によると、尹氏の支持率は24・2%で野党の候補者のなかでは最も高い。候補者全体では、進歩(革新)系与党「共に民主党」で最有力の李在明(イジェミョン)京畿道知事にトップを譲ったが、その差はわずか約3ポイントだった。尹氏が今回の疑惑で支持率を落とせば、大統領選は与党側に有利に働くことになりそうだ。

 また、国民の力では、尹氏以外の候補が苦戦してきたが、前回の大統領選にも出馬した国会議員の洪準杓(ホンジュンピョ)氏が追い上げを見せている。尹氏への捜査は、党内レースの行方も左右する可能性がある。(ソウル=鈴木拓也)