生活保護基準額の引き下げは違法・違憲? 京都地裁判決の注目点とは

米田優人
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 国が2013~15年、生活保護基準額を引き下げたのは違法か。また、生存権を保障した憲法25条に違反するか。こうした点が争われた裁判の判決が14日午後2時半、京都地裁で言い渡される。弁護団によると、同じような裁判は全国29カ所で起こされたが、これまでに判決が出た4地裁の判断は分かれている。引き下げをめぐる経緯や京都地裁判決の注目点を、Q&A形式で整理した。

 Q なぜ生活保護基準額が引き下げられたの?

 A 生活保護制度は「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を定めた憲法25条の理念に基づく。家賃にあたる「住宅扶助」や学用品費にあたる「教育扶助」など8種類ある生活保護費のうち、衣食や光熱費など日常生活に必要な費用にあたる「生活扶助」の基準額が、13年8月から3回に分けて引き下げられた。

 国は「08~11年に物価が4・78%下がった」とする厚生労働省の算定に基づいて引き下げた。削減額は計約670億円、削減幅も最大10%で、いずれも戦後最大となった。引き下げた理由として、①物価が安くなる「デフレ」の調整が必要、②物価安で受給者が自由に使えるお金が増えた――などが挙げられている。

 自民党が、自助・自立を唱え、12年末の衆院選の公約で「給付水準の原則1割カット」を掲げて戦い、政権に返り咲いたことも背景にある。

 Q 裁判で、受給者は何を訴えているの?

 A 京都府の受給者たちは、大幅な生活扶助費の減額は、保護の要件を定めた生活保護法や憲法25条に違反すると主張し、京都市を相手取り、減額決定の取り消しを求めている。「食料が尽きてご飯を食べられない時もあった」「電気ストーブがほしいが、電気代が怖くて買えない」などと日々の生活に困っている実態も訴え、国に各1万円の損害賠償も請求している。

 Q これまでに出された各地裁の裁判は?

 A 名古屋(昨年6月)、札幌(今年3月)、福岡(同5月)の3地裁は、基準額の引き下げは厚労相の裁量の範囲内として、原告側の訴えを退けた。一方、大阪地裁は今年2月、国が基準額を引き下げた判断過程に誤りがあり、裁量権を逸脱したとして減額決定を取り消した。ただ、国の賠償責任を認めたり、違憲判断をしたりした判決はない。

 Q 京都地裁判決の注目点は?

 A 最大の争点は、基準額の引き下げが、厚労相の裁量の範囲内といえるかどうか。原告側は、厚労省の算定には合理性がないとし、厚労相は専門家の意見を踏まえずに引き下げを決め、裁量権を逸脱したと主張。被告側は過去の裁判例をもとに、厚労相には幅広い裁量があると反論している。

 生活扶助に続き、15年には住宅扶助、暖房費などにあたる冬季加算が減額。18年からは再び生活扶助が減額された。生活保護費は、就学援助最低賃金など、税や福祉、教育といったさまざまな制度とも関連している。引き下げが違法や違憲と判断されれば、国の政策に影響を与える可能性がある。(米田優人)

生活保護基準額引き下げ訴訟をめぐる主な経緯

2012年12月 自民党が「生活保護給付水準の原則1割カット」を掲げて政権に復帰

 13年8月 日常の生活費にあたる「生活扶助」の減額が始まる(~15年4月)。削減額は計約670億円、削減幅も最大10%でいずれも戦後最大

 14年2月 引き下げにより最低限度の生活が送れなくなったとして、受給者らが佐賀地裁に集団提訴。以降、各地で訴訟が起こされる

 20年6月 名古屋地裁が受給者の訴えを棄却

 21年2月 大阪地裁が引き下げを違法として減額決定を取り消す

   3月 札幌地裁が受給者の訴えを棄却

   5月 福岡地裁が受給者の訴えを棄却

   9月 京都地裁で全国5例目の判決