「最悪期は背筋凍った」 財務安定のJALが資金調達を急ぐワケ

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友田雄大
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 日本航空(JAL)が、再び大規模な資金調達を決めた。コロナ禍での旅客の減少は続くが、いまの水準の赤字が1年以上続いても持ちこたえるほどの資金があるのに、なぜいま借金を重ねるのか。

 JALは10日、秋までに3千億円を調達すると発表。劣後ローンで2千億円、劣後債で1千億円ほどを調達する。いずれもふつうのローンや社債より返済の優先度が低い代わりに、金利が高くつく手法だ。

 2010年に経営破綻(はたん)し、12年に再上場。再生してからは借金に頼らない慎重な経営につとめ、経営の健全度を示す自己資本比率は年度末の数字で、13年度から一貫して5割を超えていた。航空会社としては世界でも異例といえるほど手堅い経営をしていたが、そこに感染拡大が起こった。旅客減少に見舞われたJALは、昨年1~3月期に再上場以降で初となる四半期ベースでの赤字に転落。それから今年4~6月期まで、6四半期連続で赤字が続いている。

 「最悪期は背筋が凍った」。JAL幹部はそう振り返る。新型コロナウイルスの感染拡大初期の昨春、航空券の大量キャンセルが発生。「払い戻しがあいついで、月に500億円近くの資金が流出した」。大量にキャンセルがあるという前提で多額の現金を常に用意しているわけでもなく、どんどん手元の資金がなくなっていく状況が続いていた。企業は現金が回らなくなれば倒産する。海外ではその国を代表する「フラッグキャリア」ですら、破綻や国の資本注入が相次いでいた。

 JALは借り入れや融資枠の確保などを駆使してお金を集め、さらに借金の割合を減らすために昨年11月に新しい株式を発行する増資を行って約1829億円を集めた。ただ、このときも直近(9月末)の自己資本比率は4割超あり、「財務はANAホールディングス(HD)より良いのに、ANAより早く増資するとは」(アナリスト)と市場から驚きをもって受けとめられた。

 今のJALは、手元の資金が今年6月末時点で約6500億円(手つかずの融資枠3千億円を含む)ある。旅客の減少などによる資金の流出は最悪期を脱しており、4~6月で月100億~150億円、7~9月は月50億円ほどになる予想だ。仮に想定の2倍にあたる月100億円ほどが流出したとしても、単純計算では融資枠をつかわなくても数年は耐えられる。

 また、政府は10~11月までの早い時期に希望者全員のワクチン接種を終えると説明しており、直近では旅行や出張などの制限緩和の議論もでてきた。そのタイミングで、また資金調達に踏み切った。

 ライバルのANAも昨年多額の増資や借り入れを相次いで実施したが、今年は大きな資金調達を決めてはいない。中堅各社の増資なども今年に入ってから相次ぎ、「航空各社の財務強化は一巡した」(アナリスト)という声も出ていたところだった。

 「感染拡大の影響がどこまで…

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