ライフジャケットの重要性伝え続ける 森重裕二さん

堅島敢太郎
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 「思いはただ1つ…子どもたちの命を守ること」。SNSでの発信は毎回この言葉で締めくくられる。2007年から、水辺で遊ぶ際に子どもたちへのライフジャケット着用を呼びかける活動を続ける高松市の森重裕二さん(45)に、活動内容や今後の目標などを聞いた。

 ――活動を始めたきっかけは

 小学校教員になりたての頃、学校行事で川遊びに行った時に目の前で子どもが溺れたことがありました。学生時代にカヌーをしていた私にとって、水辺でライフジャケットを着ることは当たり前でしたが、当時子どもたちは着ていませんでした。事故が起きてからでは遅いと思い、学校でライフジャケット購入に向けて動き始めました。

 数年かけて200個ほどを集めた矢先の2007年、高知県の四万十川でキャンプに参加していた小学生2人が、川遊び中に亡くなる事故が起きました。2人は私が勤務していた学校のすぐ近くの学校の児童。「自分のところだけでやっていてもだめだ」と感じ、腹をくくってその日の夜にホームページを開設したのが活動の始まりです。

 ――ホームページ以外の活動は

 SNSは毎日更新しています。事故の話だとつい誰かを責めてしまいがちになります。嫌な思いをする人が出るのを避けるため、水難事故の話はせずに、明るい話題のみにしています。

 活動に賛同してくれた方々によって、長崎の中心市街地には特大の看板、江ノ島電鉄の駅にはポスター、東京のラフティングクラブにはラッピングされた自動販売機が設置されました。子どもにもわかりやすく水辺のことが伝えられるよう、来年には絵本も出版する予定です。

 ――ライフジャケットを子どもたちに着けることでどんな効果がありますか

 水の中では、人間の体は息を吸った状態で体全体の2%しか水面から上に出ません。これは頭がわずかに出る程度。溺れると子どもたちは息を吸うのに必死なので、「助けて」と声を出すこともできず、一瞬で静かに沈んでいきます。

 しかし、ライフジャケットを着けることで、十分な浮力ができ、首の部分まで浮くことができます。香川県坂出市沖で昨年11月に起きた、小学生が乗った旅客船が沈没した事故でも、全員無事に救出されたのはライフジャケットを着けていたからでした。

 ――ライフジャケットの寄付もされていますね

 企業や個人から支援をいただき、これまでに香川県に100着、坂出市に85着を寄付しました。これらのライフジャケットは学校などの行事で子どもたちが水辺で活動する際、無料で借りることができます。香川県に寄付した100着のうち50着は、6月から貸し出しを開始し、初日に2カ月先までの予約が埋まるほどの盛況でした。ニーズがあることは分かったので、誰もが借りたいときに借りられる仕組みを「香川モデル」として進めていきたいです。

 ――今後の目標はありますか

 つい先日、スポーツ庁が発表した来年度の概算要求に、「ライフジャケットを活用した水泳の授業」が盛り込まれました。私の活動に賛同し、一緒に活動してくれている人の声が届き始めたと実感しています。

 やっとスタートラインに立ちました。ライフジャケットが浸透すれば、水難事故で命を落とす子どもは必ずゼロにできると思っています。「香川モデル」を全国に広めていくことが目標です。(堅島敢太郎)

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 もりしげ・ゆうじ 滋賀県出身。滋賀県の公立小学校で教員を15年間務め、2016年に高松市に移住。高松市でも3年間教員をしたのち、19年からは妻の実家の庵治石店「松原等石材店」で3代目として修行中。07年にホームページ「子どもたちにライジャケを!」(http://lifejacket-santa.com/別ウインドウで開きます)を開設。総フォロワーが2万人を超えるSNSでもライフジャケットの重要性について毎日発信しつつ、「ライジャケサンタ」として自治体へのライフジャケットの寄贈も続ける。