再興なるか、蒲原の挑戦

和田翔太
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 かつて宿場町としてにぎわった静岡市清水区蒲原に来年春、新たなにぎわい拠点がオープンする。同市の道の駅整備事業の一環で、民間事業者に公共施設を試験的に使ってもらう「トライアル・サウンディング」を採用する。「お試し期間」を設け、行政と事業者が協力しながら施設や事業の今後を見定める。コロナ禍で不振にあえぐ公共施設の新たな可能性を模索する場にもしたい考えだ。

 名称は「トライアルパーク蒲原」。駿河湾に隣接する旧県立庵原高校のグラウンド跡地約1万平方メートルを活用する。国道1号バイパスに近い利便性に加え、周辺には市有地もあり、状況に応じて用地拡大も可能だ。

 旧東海道の宿場町だった蒲原は、かつて産業と文化が交わる情報発信拠点だった。最近では、レトロな町並みを巡る散策コースこそ人気だが、高速道路やバイパス道路を車が行き交う「通過点」となっている。

 市は、道の駅を地域の活性化に活用しようと、2019年に「静岡市道の駅基本構想」を策定。現在、市内6カ所で整備を検討している。蒲原地区では、17年8月、地元自治会道の駅の設置を市に要望。以降、まちづくり構想の検討が本格化した。

 市は当初、民間の資金とノウハウを採り入れて施設を整備する「PFI方式」の導入などを検討したが、コロナ禍で、事業規模の見直しなどを迫られた。可能性を探る中で、最初から大規模施設を作るのではなく、施設の使い方を試しながら、実情に合わせた拠点作りをめざすことにした。

 目を付けたのが、大手だけでなく地元の中小企業も参入しやすい「トライアル・サウンディング」だ。同方式は、市が保有する公共施設を民間事業者に一定期間利用してもらう制度。少額の投資など低リスクでの参入も可能だ。

 市は民間事業者の集客力や施設との相性などを見極めることができ、事業者は立地や使い勝手、採算性などを確認できる。市は「お試し期間」を3年に設定。状況を見ながら、今後の展開を探っていく。

 市は基盤整備などの費用としてこれまでに約1億4千万円を計上。サイクルステーションとして利用できる機能を備えるほか、飲食を提供するキッチンカーやイベントエリアなどを整備する予定だ。この秋以降、事業者の公募を始める。また、今回のプロジェクトでは市内初となる「企業版ふるさと納税」を活用。市外の企業がプロジェクトに寄付すると税制上の優遇措置が受けられる。

 市道路計画課は、「1番の狙いは施設を訪れた人たちに街への周遊や交流などのきっかけ作りをすること。民間事業者にどれほど関わりたいと思ってもらえるかがカギ」と話す。

 蒲原の有志団体、NPO法人「KAMBARA15th」の栗山勝訓副理事長(42)は、「整備した拠点だけが盛り上がり、商店街の客を吸収したら意味がない。地元目線の運営が大切だ」と話す。

 PPP(官民連携)事業に実績のある日本総合研究所リサーチ・コンサルティング部門の板垣晋シニアマネジャーは、「トライアル・サウンディングだけが投資の目的にならないように先を見据えた事業デザインをしていくことが大切だ」と指摘する。

 市は3年間の「試行」の結果を踏まえ、蒲原地区の実情にあった拠点作りを進めていくとしている。(和田翔太)