慶応義塾大学教授の田中浩一郎さん 【連載】アフガニスタンを思う③
アフガニスタンの武装勢力から国家統治を担う存在となったタリバンとは、どんな集団なのか。今後、どんな治世が始まるのか。
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イスラム主義勢力タリバンが政権を握り、混乱が続くアフガニスタンにゆかりのあるジャーナリストや有識者に思いを取材する連載です。連載3回目では、かつて国連の現場、そしてアカデミックな世界からタリバンを見続けてきた慶応義塾大学の田中浩一郎さんに、タリバンの本当の姿について取材します。
かつて国連アフガニスタン特別ミッション政務官として、旧政権時代のタリバンと向き合い、現在まで分析を続けてきた慶応義塾大学教授の田中浩一郎さん(59)は、彼らが再び過ちを繰り返すことを懸念します。
――タリバンは女性への人権侵害や、むち打ち、公開処刑、異宗派の虐殺をしてきた恐ろしいイメージがあります。話のできるような相手ですか?
「人によりけりです。目が血走っていて、理詰めで話してもまったくダメな人もいます。自分たちの主張に従わない者は殲滅(せんめつ)するという白か黒しかないタイプです。一方で、イスラムの教えでは罪なき民を殺してはならないと考え、自分なりのブレーキをかけ、越えてはいけない一線を保とうとする人たちもいます」
「タリバンも普通の人は普通です。誰かの子供として生まれ、誰かの親でもある。自分の子供のために平和を願っている。しかし、その普通の人がタリバンという集合体で行動したとき、とてつもない非人道的な罪を平気で犯す。政治的にも、軍事的にも。部隊として動き、タリバンの名の下で行われる暴虐行為はとてつもないものがある。個人個人だけを見て、タリバンは善人だなどと絶対に言ってはいけない」
「不幸にして、これはタリバンだけの性質ではありません。1990年代の内戦時代、お互いやってはやり返すというのが、行動原理になっていた。タリバンだけがひどいことをしたわけではないと思います」
――なぜ、集団としてのタリバンは暴走するのでしょう。
記事後半では、田中教授がタリバンの根本的な体質について考察します。さらには、今後タリバン政権で何が起きるのか、過去の歴史をひもときながら解説します。
「タリバンは『アミール・ア…