仕事が自分に向いていない…悩んだら同僚を観察、コツを盗む

中島美鈴
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 「今の仕事が自分に向いていないなあ」って感じたことはありませんか。そんなときには、改めて職場を見渡してみましょう。だれかお手本になるような人が見つかるかもしれません。臨床心理士の中島美鈴さんが解説します。

素敵な社員を観察

 前回、ADHDの主婦リョウさんは、パート先の素敵な社員のナツミさんを観察して、お昼休みの窓口対応をしながら他の集計作業を進める時に、あえていつもよりもパソコンに没頭しすぎることなく、姿勢をよくして、話しかけやすい雰囲気を作っていたことを発見しました。

https://www.asahi.com/articles/ASP933TVDP80ULBJ00V.html

 でも秘訣(ひけつ)は他にもありそうです。

 リョウさんは、ナツミさんが窓口に来た人にどう声をかけるのか見ていました。

 ナツミさんは直前まで手元で集計作業をしていました。集計作業は、数字を扱うもので、その作業を中断すると、どこの行まで入力したかわかりにくくなって、作業を再開するのがけっこう難しいのです。しかしナツミさんは、窓口に人が見えるやいなや、手元に用意していた付箋(ふせん)をパソコンの画面に貼り付けて、笑顔で対応したのです。付箋は入力中のセルのところに貼り付けられていました。なるほどこれなら、作業を中断されても戻りやすいので、快く窓口対応もできそうです。誰だって作業が中断されるといい気分ではありませんが、集中し続けるのが難しいADHDタイプの人にとっては、やっと乗ってきた作業を中断され、またそこに戻ろうにも再び集中するのが難しいのです。この付箋作戦なら「中断されることを前提に」対策がとられているのもよさそうです。

対応はクッション言葉で

 また、リョウさんは、ちょうどナツミさんが電話対応をしているときに窓口に来客があったときの様子も観察しました。ナツミさんは、まず電話口の相手にこう言ったのです。

 ナツミ「恐れ入ります。お調べしてこちらからおかけ直したいのですが、よろしいでしょうか。」

 リョウさんは“恐れ入ります“というセリフをあまり口にしたことがありませんでした。が、この言葉が冒頭に入るだけでずいぶん電話の中断を切り出しやすくなるなと思いました。クッション言葉というものでしょうか。これはセリフ道具としてもっておくと、話を切り上げるときにも使えそうです。

 また、ナツミさんが焦らずに落ち着いた声で話しているのも印象的でした。自分だったら「ちょっとすみません。あの、あの」とおどおどしたかんじになるからです。

 リョウ「そうか。ナツミさんみたいに落ち着いて話すこともできるはず。だって、どう急いだって、まずはきちんと伝えることを伝えないと」

 会社の顔ともいえる電話口ですから、落ち着いた声で対応したほうが良いに決まっています。

思考を替えて手本を見つける

 ADHDの方が仕事でミスをしたときに、「ああ、私はやっぱりだめなんだ」と漠然と自分全体を責めることはよくみられます。しかし、これでは気持ちは落ち込む一方です。リョウさんのように「私のまわりでお手本にできるような人はいないかな」と思考を切り替えて、観察しながら技を盗むことで、ずいぶん働きやすくなるはずです。

 観察のコツは、「具体的な行動」として分解しながら盗むことです。

 × よくない観察の例:「あの人は、なんとなくできるかんじがする」

 ○ してほしい観察の例:「ナツミさんは、机の上に作業中の資料以外置いていない」

 違いがわかりますか?

 自分がまねできる行動を、しっかり分析して盗み取りましょう。

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中島美鈴

中島美鈴(なかしま・みすず)臨床心理士

1978年生まれ、福岡在住の臨床心理士。専門は認知行動療法。肥前精神医療センター、東京大学大学院総合文化研究科、福岡大学人文学部、福岡県職員相談室などを経て、現在は九州大学大学院人間環境学府にて成人ADHDの集団認知行動療法の研究に携わる。他に、福岡保護観察所、福岡少年院などで薬物依存や性犯罪者の集団認知行動療法のスーパーヴァイザーを務める。