韓国大統領選の野党有力候補、国情院長を「不法介入の疑い」と告発

韓国大統領選挙2022

ソウル=鈴木拓也
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 韓国大統領選の野党有力候補である尹錫悦(ユンソクヨル)前検事総長の陣営は13日、情報機関・国家情報院トップの朴智元(パクチウォン)院長を国家情報院法違反などの容疑で捜査機関「高位公職者犯罪捜査処」(公捜処)に告発した。尹氏側は、朴氏が根拠のない疑惑をメディアにリークした企てに加担し、大統領選に不法に介入した疑いがあると主張している。

 公捜処は10日、保守系最大野党「国民の力」の有力候補である尹氏に対し、職権乱用や公職選挙法違反など四つの容疑で関係先への家宅捜索に乗り出した。尹氏が検事総長だった昨春、与党政治家の立件を狙い、野党議員に告発を促すよう自らの側近だったとされる検事に命じたとの疑惑が捜査対象になっている。

 韓国のインターネットメディアが2日にこの疑惑を報道し、公捜処が強制捜査に乗り出した後、メディアに情報提供したという女性が名乗り出た。女性は今年まで国民の力に所属しており、昨春は前身の未来統合党の選挙対策委員会の幹部を務めていた。この女性と朴氏が報道前の8月11日に、ソウルの高級ホテル内の飲食店で食事をしていたことが明らかになった。朴氏は面会を認めつつ、尹氏の疑惑については「女性とは全く話していない」と否定している。

 一方の尹氏側は、2人が以前からの知人で、朴氏が女性をそそのかしたと批判している。「野党の有力候補を引きずり下ろそうとする卑劣な試み。政権の汚れた政治工作は直ちに中断されるべきだ」として、公捜処に厳正な捜査を求めた。尹氏の疑惑が連日報道されるなかで、世論の批判の矛先を与党に向けようとの意図もあるようだ。

 一方、進歩(革新)系与党「共に民主党」は12日、来年3月の大統領選に向けた党の公認候補を選ぶ党内選挙で、一般有権者による初回の投票結果を発表した。李在明(イジェミョン)京畿道知事(56)が51・09%を得て、2位の李洛淵(イナギョン)元首相(68)に20ポイント近い差をつけ圧勝。各地の党員投票でも4戦全勝しており、10月上旬まで続く党内レースを制する公算が大きくなった。

 支持が伸びず低迷を続けてきた丁世均(チョンセギュン)前首相(70)は13日、党内選挙からの撤退を表明した。記者会見で「私の決定は党と新しい大韓民国のためだ」と語った。(ソウル=鈴木拓也)

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    箱田哲也
    (朝日新聞記者=朝鮮半島担当)
    2021年9月14日0時18分 投稿
    【解説】

     韓国大統領選では「恒例」の、捜査当局への告発合戦という泥仕合が始まった。今回の大統領選では、野党の有力候補が前検事総長の尹錫悦氏であることや、文在寅政権下でできた「高位公職者犯罪捜査処」(公捜処)が高官に対する捜査にあたることで、いっそう

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