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減る感染者、いま怖い「リスキーシフト」 人流分析する専門家の見方

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聞き手 編集委員・田村建二
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 1日あたりの感染者数が、一時は約5800人に達していた東京都。最近は1千人程度まで減少し、「第5波」は収まりつつあるように見えます。ただ、繁華街への人出のデータを分析し、厚生労働省の専門家組織などに報告している東京都医学総合研究所の西田淳志・社会健康医学研究センター長は、「人々のあいだで『リスキーシフト』が起き、リバウンド(感染再拡大)につながることが心配」といいます。どういうことでしょうか。

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オンラインで取材に答える、東京都医学総合研究所の西田淳志・社会健康医学研究センター長

 ――最近、東京都などで新規の感染者が減っているようです。要因をどう分析しますか

 報道では、「繁華街などへの人の流れが十分に落ちていないのに、感染者が減っている。これはおかしいのではないか」という見方も示されています。しかし、私たちの分析だと、それなりの理由があって感染者数は減っていると考えられます。

 私たちは、とくに感染拡大につながりやすい深夜帯(午後10時~12時)の繁華街での滞留人口、つまり一定時間以上、レジャー目的で深夜の繁華街にとどまった人の数を、緊急事態宣言が出される前と比べて50%まで減らすことが重要と考えていました。

 実際には、都内の深夜の滞留人口は宣言前からお盆にかけて、7週連続で下がりました。目標としていた50%には達しませんでしたが、お盆の時点で宣言前と比べて36%減少しました。

中高年で進むワクチン接種

 それに加えて、中高年層でのワクチン接種が進みました。このことが、感染者数の減少と大きく関係していると考えています。

 今回の宣言期間中、都内の主な繁華街の夜間滞留人口のうち、どの年代の占める割合が多かったのかをみると、ほとんどの時点で、40~64歳の中高年層が最も多く、次いで15~39歳の若い世代となっていました。

 よく「若者が繁華街で夜遅くまで遊んでいる」などと言われますが、感染リスクの高い行動をとっていたのは、若者よりもむしろ、中高年の人たちが多かったようなのです。

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繁華街の夜間滞留人口に占める割合は、40~64歳の中高年(オレンジ色)の方が、15~39歳の若者(青色)よりも高かった=東京都医学総合研究所提供

 一方で、東京都のデータによると、40~64歳の中高年層のワクチン接種率は、お盆の頃には1回目接種が45%、2回目接種が25%程度にまで上昇してきていました。

 私たちは、都内の一般人口における年代別の接種率と、繁華街での夜間滞留人口における年代別の接種率とが、仮に同程度だったという前提のもと、「ワクチンを1回も接種していない人が、深夜の繁華街にどの程度滞在していたか」を推計しました。

 すると、お盆時期における「ワクチン未接種者による深夜の滞留人口」は、宣言前と比べて50%程度減っていたということがわかってきました。

 夜間の滞留人口が一定程度減少したことに加えて、滞留人口の多くを占める中高年層においてワクチン接種が一定程度進んできたことが、相乗効果となって、こうした状況につながっているのではと思います。

滞留人口が「半減」、相乗効果

 そして、ワクチン接種率を加味すると、深夜の繁華街での滞留人口は、前回である今年4月の宣言のときよりも大きく減少し、昨年の最初の宣言のときの減り方に近づいていたことがわかりました。

 「人の流れはほとんど減っていない」とも言われますが、それは昼間の、主要駅などを通過する人の数をさすことが少なくありません。

 しかし、職場と自宅を通勤で…

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