動物園への移送組、順調に成育 ライチョウ復活のかぎ握る4羽

近藤幸夫
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 長野市茶臼山動物園で、中央アルプス生まれの国の特別天然記念物ライチョウのヒナたちが順調に育っている。半世紀前に絶滅したとされる中央アルプスで環境省が進める「復活作戦」の一環。来夏には、動物園生まれのヒナたちが、野生復帰する予定だ。

 8月3日、中央アルプスで自然繁殖し、木枠と金網製のケージで保護された2家族が、ヘリコプターで茶臼山動物園と那須どうぶつ王国(栃木県)に移送された。茶臼山動物園には、母鳥1羽、ヒナ3羽(オス1羽、メス2羽)の計4羽。動物園では、放し飼いができる飼育施設内に、中央アルプスで使用したものと同じケージに置いて収容し、午前と午後、屋外に出して散歩をさせている。

 到着時に100~125グラムだったヒナたちは順調に育った。健康状態は良好で、体重は393~432グラム(9月9日現在)。母鳥(450グラム)とほぼ同じ大きさになり、見た目は若鳥といえる。餌は配合飼料のほか、コマツナ、リンゴ、ブルーベリーなどを与えている。

 一般公開はしていないが、屋外散歩の際は来園者が撮影するチャンスもある。だが、ヒナたちは臆病だ。来園者が急に飼育施設に近寄ったり、園内で工事をする重機の音が聞こえたりすると驚く。母鳥は落ち着いているが、ヒナは高山からいきなり環境が変わって戸惑っているようだ。

 復活作戦において、動物園に移送されてきたライチョウが果たす役割は大きい。ライチョウは、餌となる高山植物の毒素を分解するため、孵化(ふか)直後に母鳥が出す盲腸糞(ふん)を食べることで中に含まれる腸内細菌を体内に取り入れることが知られている。つまり、野生の卵を移送して動物園で孵化して育った由来の、現在各園にいるライチョウを、そのまま野生復帰させるのは難しい。孵化直後に中央アルプスで過ごし、この夏に動物園へやって来たヒナが来年、園で繁殖に成功すれば、腸内細菌を持つ個体を人工的に増やすことができる。

 計画では、近親交配を避けるため、那須と茶臼山の両園のオスを交換して、来年に再び繁殖し、生まれたヒナたちを中央アルプスに野生復帰させる。現地で自然繁殖したライチョウと合わせ、一気に個体群が増えるという仕組みだ。

 茶臼山動物園でライチョウを担当する田村直也学芸員は「来年の繁殖に向けて課題は貴重なヒナの事故を避けること。驚いて足をくじくなどが心配。人間の急な動きにも敏感なので、来園者はそっと見守ってほしい」と話している。(近藤幸夫)