大学教員の派遣業務支援

新型コロナウイルス

松永和彦
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 新型コロナウイルスの感染拡大にともない、看護系大学の教員が、兵庫県や市の依頼で保健所の業務に加わっている。本業である学生への講義や実習をこなしながら、都合をつけて電話対応などにあたる。緊急事態宣言が延長され収束が見えないなか、支援が必要な状況は続きそうだ。

 9日午前、西宮市江上町の市保健所に武庫川女子大学西宮市)の松尾香織助教(39)の姿があった。自宅療養の患者に電話をかけ、症状に変化はないか、食事はとれているかなどを聞き取って手際よくパソコンに打ち込んでいった。松尾さんはこの日、シフト通り午前9時から正午まで、保健所で聞き取り業務にあたった。

 同大学は連携協定を結ぶ西宮市からの依頼を受け、「第4波」が拡大した5月から、看護師の資格を持つ教授や准教授ら教員を市保健所へ派遣している。計34人の教員が、午前・午後・夜間の3交代のシフトを組んで業務に入る。5月は延べ61人が計239時間の業務をした。感染者が減った6月はなかったが、拡大傾向になった7月末から再度始め、8月は延べ124人計447時間だった。

 市保健予防課によると、支援に入る教員は、自宅療養者の健康観察や、入院待ちの患者の体調確認、感染者が発生した施設の状況確認などの電話対応にあたる。市は、1人あたり時給1740円を大学へ支払っている。

 保健所によると、感染拡大の局面では、業務が集中し日付をまたぐ時間まで終わらないこともあるという。市の担当者は「派遣会社を通じて一部業務の外部委託もしているが、職員の増員は簡単にはできない。教員の皆さんに来てもらい、非常に助かっている」と話す。

 看護系大学への保健所業務の支援依頼は、県も行っている。県健康増進課によると、県下の10大学が要請に応じ、県管轄の健康福祉事務所(保健所)へ教員を派遣している。西宮市と同様、業務は健康観察などの電話対応が中心で、人件費も支払っている。

     ◇

 5月の感染拡大時から、保健所の支援に加わっている武庫川女子大学看護学部看護学科の3人に話を聞いた。

 学科長の宝田穂(みのり)教授(62)は、西宮市保健所のフロアに入った時のことを「これは災害やなと思った」と振り返る。災害時にテレビに映る、慌ただしく作業にあたる職員たちの姿と重なったという。

 部屋にあるホワイトボードにはコロナ患者の発生届などが所狭しと貼られていた。電話対応の声が朝から夜まで飛び交う。他部署の市職員も応援で来て電話をかけ続けている。ただ、業務を終えて保健所から外に出ると、災害とは異なりいつも通りの光景があった。「大変な事態が起きていることが、一般の人に伝わりにくい怖さがコロナにはある」と宝田さん。

 教員たちは、自身の研究時間やプライベートな時間を調整して業務に加わる。学生の講義や、実習の時間を削るわけにはいかない。金谷志子(ゆきこ)准教授(51)は「看護の道に携わるものとして、何かできないかという思いは皆あった。無理のない範囲で支援しているし、いい経験になっている」と前向きにとらえている。

 和泉京子教授(53)は「電話口で話す患者さんはとてもつらそう。リスクのある行動は控えてと呼びかけたい。コロナの終わりが見えない中、長期的に支援を続けていく」と話した。(松永和彦)

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