「テロの理由に目を」 米タリバン双方を批判、マハティール氏の思い

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 2001年、9・11米同時多発テロが起きた直後、イスラム教国のリーダーとしていち早くテロを非難したのが、当時のマレーシア首相、マハティール・ビン・モハマド氏(96)だった。マハティール氏はアフガニスタンのイスラム主義勢力タリバンに対しても、その政策に批判的な立場を取る一方、米国中心の「テロとの戦争」も「無関係の市民に対する攻撃だ」と非難してきた。9・11から20年が経った今、アフガニスタンからの米軍撤退やタリバンの復権を、どう見ているのだろうか。

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マハティール氏=2019年11月、韓国・釜山、貝瀬秋彦撮影

 ――9・11から20年が経過しました。この事態は、世界の政治にどんな影響を与えたとみていますか。

 「米国が、自国の安全保障により気を配るようになりました。米国は大西洋と太平洋に囲まれているために安全だと考えてきましたが、9・11では本土に攻撃を受けました。欧州など他の国と同じように、自らも攻撃にさらされうることを認識したのです」

 「しかし残念ながら、安全を守ろうという考えが、米国への攻撃に責任があると判断した相手を攻撃する、という考えに転換されてしまいました。イラクアフガニスタンへの侵攻が、それにあたります」

 ――米国はいま、そうして侵攻したアフガニスタンから撤退し、新たな混乱を招いています。

 「米国は撤退すべきではありました。ただ、もっと少しずつ退くべきだったと思います。アフガニスタンにも優秀で、かつ民主的な政府を望んでいる人たちがいます。しかし、そうした人たちにとっても、社会のしくみや価値観、文化の違いのため、民主化は簡単ではありません。民主主義を理解し、実践するには長い時間がかかります。しかし米国は急に引き揚げてしまった。アフガニスタン側も準備ができていなかったということだと思います」

 ――9・11の発生直後には、マレーシアの首相としてテロを非難する声明を出し、翌年には当時のブッシュ米大統領とも会談されています。どんな思いで事態を見ていましたか。

 「こうした類いの暴力は世界にとっていいものではない、と考えていました。暴力は暴力を呼ぶからです。何らかの問題を解決するには、暴力ではなく、交渉や国際的な仲裁、あるいは法廷での決着をめざすべきなのです」

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マレーシアのマハティール首相(当時、左)と米国のブッシュ大統領(同、右)=ロイター。2002年5月14日、マハティール氏はホワイトハウスでブッシュ氏と会談した

 「しかし私たちが目にしたのは、報復しようとか、攻撃には力で対応しようという考えでした。世界がさらなる暴力にさらされることになったのです。米国はイラクアフガニスタンを攻撃し、いずれのケースでも、数十万人が命を落としました。そして結局のところ、いまだに過激派勢力による暴力の問題は解決されていません」

 ――テロとの戦いについては、当時から「誰がテロリストなのかをはっきりさせるべきだ」と主張されていますね。

 「当時、世界中がテロに反対…

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