ゲノム編集、ノーベル賞技術を難病治療活用 患者の体内で遺伝子改変

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神宮司実玲
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 ねらった遺伝子を改変するゲノム編集の技術を病気の治療に生かそうと、研究が進んでいる。海外では「CRISPR(クリスパー)/Cas(キャス)9」という技術を使い、患者の体内で、病気の原因となる遺伝子を壊すことに世界で初めて成功したと報告された。どんな研究で、何が期待されているのか。

血管内に1回注入で「既存薬と同等の有効性」

 注目の研究報告があったのは今年6月。英ロンドン大などのグループによるもので、クリスパー・キャス9を使って、難病が治療できる可能性を示したものだった。

 この難病は、トランスサイレチン型アミロイドーシスと呼ばれる。主に肝臓でつくられるたんぱく質トランスサイレチンが異常な形になってかたまり、アミロイドという繊維状になる。それが神経や心臓、肺などに付着してたまり、神経のしびれや心不全などの症状を起こす。症状があらわれると進行が止まらず、治療しなければ死に至る場合もある。

 多くは何らかの原因で、加齢とともに異常が出てくるが、まれにトランスサイレチンをつくる遺伝子に変異がある「遺伝性」の人もいる。遺伝性はとくに症状が悪くなりやすく、1990年代に肝臓移植による治療が始まった。その後、アミロイドをできにくくする薬が開発され、さらにトランスサイレチンが細胞内でつくられることを妨害する「核酸医薬」も使われている。

 ただ、これらの薬は基本的に、定期的に通院して投与されたり、処方を受けたりする必要がある。

 グループは今回、バイオ企業などと、患者の肝臓で異常なトランスサイレチンをつくる遺伝子をこわす臨床試験を実施した。46~64歳の患者6人に対し、肝臓の細胞にとりこまれるように細工したクリスパー・キャス9の材料を血管内に注入した。

 注入から28日目に血液を採ってトランスサイレチンの濃度を測定。すると、体重1キロにつき0・1ミリグラムを注入した3人は、トランスサイレチンが平均で52%減っていた。0・3ミリグラムの3人では、平均で87%減っていた。安全性にも大きな問題は確認されなかった。

 一方で、トランスサイレチンには、ビタミンAを体内で運ぶ役割がある。既存の薬と同じように、治療で血液中の濃度が下がれば、ビタミンAを補給する必要がある。

 この病気に詳しい信州大の関…

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