慈善活動の時代は終わった 障害者が握る、ビジネスの可能性

V500

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 「障害とビジネス」フォーラムが8月20日、東京・大手町で開かれた。日本財団と、障害者が活躍する社会をめざす世界500社のネットワーク組織「The Valuable 500」が共催。障害者の視点をビジネスに取り込む価値について、ビジネスリーダーらが意見を交わした。

 「The Valuable 500(V500)」を創設したキャロライン・ケイシーさんと、V500会長のポール・ポルマンさんが、基調対談をした。世界で障害者インクルージョン(包摂)を進めるためにビジネスを変える、という活動への思いを語り合った。

 新型コロナの影響で2人は来日せず、会場では事前に録画されたオンライン対談の動画がスクリーンに上映された。

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キャロライン・ケイシーさん

 これに先立って、会場とライブでつながったケイシーさんがオンラインであいさつ。「障害者インクルージョンをビジネスチャンスにする。それが慈善活動だった時代は過去のことだ」と述べた。

 障害者は世界人口の15%を占めるとして、購買力の大きさから「雇用の問題だけではない。こんな大きな市場から背を向ける選択肢はない」と力説。企業のイノベーションやブランド向上にとって重要な存在となり、障害者がビジネスすべてに関わって視点を製品デザインに反映するなど、潮流が変わってきたという。

「同情がほしいのではない」

 ケイシーさんは、障害者に対する「同情がほしいのではない」と強調。「元々の潜在能力をバリアーをなくすことで発揮できるようにしてほしい」と訴えた。また、コロナ禍で不公正や不平等が世界にあることが浮き彫りになった状況のなか、インクルージョンは障害者にとどまらず「全員のため」になるとの認識も示した。

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キャロライン・ケイシーさん

 続いての対談では、まず2019年にV500が発足した経緯が語られた。ユニリーバのCEOだったポルマンさんは、「障害の分野こそ変革を必要としていた」と参加の動機を語った。

 ポルマンさんは「障害者の多くが教育や訓練、雇用など多くの機会を得ることができない。気候変動でもパンデミックでも、不当に影響を受けるのが障害者だ」との問題意識を示し、「ビジネスの参加なしには抜本的、構造的に変革できない」と、世界の企業が参加するV500の意義を強調した。

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ポール・ポルマンさん

 ケイシーさんは「経営者には、障害への取り組みがまだ理解されていないのではないか。なすべきは正しいことだけではない。持続可能な誠実な方法で利益につながるプロセスを進めることだ」と課題を示した。

 これに対し、ポルマンさんは「認識を高めていくのにV500のネットワーク組織が必要とされている」と応じ、「ビジネスで長期的に収益を上げる唯一の方法は、インクルーシブな環境を整えること。障害者が生産性や忠誠心に劣り費用もかかるという通念があるが、実際はその逆だ」と解説。ユニリーバでは、障害者を積極的に雇用した事業所の社員満足度は高く、最終的に業績向上にもつながる、と事例を紹介した。

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ポール・ポルマンさん

 コロナ禍における環境変化にも話が及んだ。ポルマンさんは「コロナ禍でも成功している企業や経営者は共感や思いやり、謙虚さを示している。不安や苦悩を抱える多くの人に寄り添ってきた」。持続可能性を中心に考える人がコロナ禍でも対処できているとし、「こうしたリーダーシップを育てていかなければならない」と話した。

 最後に、ポルマンさんは「十分な生産性を発揮できる労働力を確保するためには、次世代にわたっても事業を成功させるためにもインクルーシブであることが必要だ」と強調し、さらに多くの企業の参加を呼びかけた。

 シンポジウムの開催は、ちょうど東京パラリンピックの直前の時期。2人からはパラへの期待の声も上がった。ケイシーさんは「全く新しいインクルージョンの波が起きる」。ポルマンさんは「スポーツは政策を転換するのに理想的だ。人類が取り組まなければならない、この最後の喫緊の課題を変える必要があるという認識が生まれるのでは」と語った。

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 キャロライン・ケイシーさん アイルランド出身。視覚障害がある社会起業家V500の発起人。世界に変化をもたらす優れた人材として国際機関「世界経済フォーラム」のヤング・グローバル・リーダーも務める。

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 ポール・ポルマンさん オランダ出身でV500会長。世界的な消費財メーカー、ユニリーバの前CEOで、「国連グローバル・コンパクト」の副代表を務める。