SDGsは、渋沢栄一に通じる? 東急社長が語る「青天を衝け」

聞き手・宮田裕介
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 大河ドラマ「青天を衝(つ)け」(NHK、日曜夜8時)は、いよいよ本格的に明治時代へ舞台を移す。渋沢栄一が「日本資本主義の父」と呼ばれる側面が色濃く描かれていく。渋沢ゆかりの経営者は、どのように大河を見ているのか。東急の高橋和夫社長に尋ねた。

 ――大河ドラマをどのように見ていますか。

 幕末から明治にかけての激動の時代に、渋沢栄一という若者が台頭していく姿がエネルギッシュに描かれていますね。面白いです。ただ、「毎週見たいぞ」と思っていても、東京オリンピックパラリンピックで、一時中断したことは、ドラマが盛り上がれる時に盛り上がれなくて、少し残念でした。

 渋沢は農民から幕臣へ、明治維新後は大蔵官僚から実業家になりますが、ピンチの時こそチャンスだとする姿勢がある。東急は今、コロナ禍で厳しい経営状況にありますので、勇気づけられています。そういう境遇と重ねあわせて、大河を見る人もいるのではないでしょうか。

 ――新型コロナの影響を大きく受けているのですね。

 鉄道やバスなどの交通インフラや都市開発などが当社の事業で、いわば、人を集めることがビジネスです。それが「人流」を抑制されてしまうと、経営状況は非常にシビアになります。コロナの影響もあり、在宅勤務など、人々の行動様式はり一層変わっていきます。われわれはその状態に合わせて変わらないといけないし、企業マインドそのものを変えていこうとしています。

 ――厳しい経営状況ながら、その先の未来を見据えているかと思います。例えば、再生可能エネルギーで走る「SDGsトレイン」を走らせています。

 持続可能な経済と社会と、それから環境が重なって初めて、経営ができると思っていて、ビジネスを遂行していくための必要なことだと思っています。

 東急の源流は、渋沢が中心となって1918年に設立した田園都市株式会社にあります。渋沢は人口の都市への集中を懸念し、郊外に理想の街をつくろうとしました。渋沢が約100年前にやろうとしたことは、今の東急がやるべきことと変わっていません。常に地域の方々と、向き合い、いかに幸せになれるかを考え、お互いの信頼関係を築く。われわれは信頼のビジネスをやっていると思うし、「東急さんなら大丈夫」と言ってもらえる自負もありますから、そこを裏切らないように実践していく。渋沢のDNAを継承していきます。

 ――渋沢は著書「論語と算盤(そろばん)」で、道徳と経済活動、双方の必要性を説きました。経営者としてその考え方をどのように解釈していますか。

 今の時代は、高度経済成長期のように自社の利益だけを追求するのではないという考え方がより明確になってきている時代です。企業が株主だけでなく、従業員や取引先、顧客、地域社会などの利益にも配慮すべきだとする「ステークホルダー資本主義」の考え方や、SDGs(エスディージーズ)(持続可能な開発目標)の精神そのものでしょう。業種が異なる約500の企業設立に渋沢が関われたのも、企業の大切な根っこは同じだったからではないでしょうか。

 その部分がビジネスにかかわっている人に共感されていると思います。なかなか口で良いことを言っていても、会社の事業が心配になるのは当たり前です。そこをどれだけ踏ん張れるかなんじゃないでしょうか。しっかりやっていく会社のみが生き残れると思っています。

 ――今後、ドラマにどのような期待をしていますか。

 今でこそ「人生100年時代」と言われますが、この時代で91歳まで生きた渋沢が晩年、社会とどのようにかかわったかに興味があります。ぜひ、ドラマで描いてほしいです。(聞き手・宮田裕介