SUV、手動から楽に切り替え あえて「福祉車両」と呼ばないマツダ

V500

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 世界500社のネットワーク組織「The Valuable 500(V500)」は、障害の有無にかかわらず誰もが個性や能力を発揮できる社会をめざし、雇用や製品サービスにおいてビジネスを変えていくことを目的にしている。参加企業が進める先進的な取り組みを紹介する。

 マツダは、足が不自由な人でも運転できる手動運転モードと、足を使う運転モードを、起動時の簡単な操作で切り替えられる世界初の機能を備えたSUV(スポーツ用多目的車)を開発。今秋、発売する予定だ。

 マツダのSUV「MX―30」(電気自動車タイプ)は、車のスタートスイッチを押す際に手動レバーを押せば手動運転モードに、ブレーキペダルを踏めば足を使う運転モードになる。足が不自由な人と健常者が、1台の車を一緒に使ったり、運転を交代しながらドライブを楽しんだりしやすくする。

 従来の手動運転は、レバーでアクセルもブレーキも操作するため、走行中は基本的に両手を使う必要があった。MX―30はハンドル内側のリングでアクセル操作をするため、緻密(ちみつ)な加減速がしやすいほか、サンバイザーの操作などで一時的に片手を離しやすくなる。

 また開発段階で足が不自由な社員らの声を聞いたところ、車いすから運転席への乗り移りや、その後の車いすの積み込みが大変という従来の福祉車両の課題が浮かび上がった。その声を生かし、車いすから運転席に乗り込みやすくするため、いったん腰を乗せられる「移乗ボード」を運転席の横に搭載。運転席と後部座席のドアは観音開きの「フリースタイルドア」にして、車いすを自分の体の上を通さなくても、後部座席に積み込みやすくするなどの工夫も凝らした。

 マツダは約60年前、3代目社長の故・松田恒次氏が足が不自由だったことから、同社初の乗用車「R360クーペ」に搭載する手動運転装置を開発。「MX―30」の手動運転装置は、「3代目社長の思いを現代の技術で具現化したもの」と位置づけており、あえて「福祉車両」とは呼んでいない。

 開発にかかわった商品本部の前田多朗主査は「障害があっても、自ら運転して意のままに行きたいところに行ける喜びを享受していただきたい」と話す。