女子ゴルフ有料配信のリアルな収支 公表した主催企業の意図と願い
東京五輪で稲見萌寧が日本勢初の銀メダルを獲得し、女子ゴルフツアーはシーズン終盤に向けて注目度が高まる。その大会放映権をめぐっては、テレビ局と日本女子プロ協会(JLPGA)の対立が続く。
そんな中、昨年からテレビ中継から手を引いたのがアース・モンダミンカップ(2021年は6月24~27日開催)だ。狙いと成果を、大会会長でアース製薬会長の大塚達也氏(63)に聞いた。
かかった経費、約1.5億円
――今大会は4日間2200円で有料インターネット配信を行った。その成果は。
「昨年もテレビ中継はせずにユーチューブで無料配信をして、大会期間中に868万回の視聴があった。有料配信とした今回は『2万人くらい見てくれれば』と思っていたが、実際は8300人ほどだった。配信のためのスタッフは約150人、経費は約1億5千万円かかっているので、10分の1くらいしか回収できなかったことになる。年配のファンの中にはスマホやパソコンになじみのない方も多く、煩雑な登録手続きにてこずった方も多かったようだ」
――価格設定については。
「ライブ配信で利益を上げるには、チケット価格の3分の1が相場だと聞いている。今大会のチケットは1日1万円だったので、かなり低めの設定だった。料金体系や、アクセス方法の簡素化など、来年に向けてじっくり考えたいと思う」
――金を払ってスポーツ中継を見る、という習慣が日本では定着していない。
「コンテンツを作るのに、当然金はかかる。それをすべて主催者が払っているのは、プロスポーツ界でゴルフくらいではないか。テレビ局と広告会社が作り上げてきた『主催者におんぶにだっこ』という仕組みはやめていこう、というのが私の主張」
――配信を購入すれば、七つのチャンネルを見ることができた。コンテンツとしての満足度は高かったのでは。
「もともとは全18ホールのチャンネルを設置し、視聴者が好きな場所を見られるようにしたかった。でも実際に中継ブースを見学に行って、7チャンネルだけでもこんなに現場は大変なのかと思った」
――英語で実況・解説するチャンネルもあった。
「海外のファンや、海外でゴルフ放送に関わっている方に興味を持ってもらうきっかけになればと思って作ったサンプル。実際、昨年からはJLPGAを通じて韓国でも放送してもらい、映像使用料をいただいている。海外への販売は、今後も意識してやっていきたい」
テレビ局は「既得権益にしがみついている」?
――海外で大会映像を流すと、その利益はテレビ局に入るのが慣習となってきた。
「我々主催者がテレビ局に金…