県の4病院再編構想 波乱含み 仙台では不安の声 市長は協議の意向

福岡龍一郎、申知仁、徳島慎也
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 仙台市名取市の4病院を2拠点に再編する宮城県の方針が、波紋を広げている。県は仙台市への病院の集中を是正したい考えで、村井嘉浩知事は知事選で争点化する構えだ。一方、仙台市の住民からは病院が移転するのではと不安の声が上がり、郡和子市長は15日、村井知事と早急に協議する考えを示した。(福岡龍一郎、申知仁、徳島慎也)

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 9日の県議会代表質問。村井知事は突如、仙台赤十字病院(仙台市太白区)と県立がんセンター(名取市)を統合し、東北労災病院仙台市青葉区)と県立精神医療センター(名取市)は経営主体を残して合築する方針を表明した。

 前日の夕方、各病院の運営主体とこの方針の協議を始めることで合意し、9日午前に仙台市など関係自治体に伝えたばかりだった。

 県はそれまで、総合的ながん治療の拠点づくりを掲げて、精神医療センター以外の3病院の統合を視野に協議を重ねてきた。だが立地場所や規模を巡って折り合いがつかず、新たに4病院での「2+2」の枠組みを県が提案したという。

 今回の病院の再編構想で県が強調するのが、病院の仙台市への「偏在」を是正することだ。

 県によると、救急患者を受け入れる機能は仙台市に集中している。救急搬送で現場滞在時間が30分以上となる割合は、仙台市消防局で7・6%だが、名取市消防本部では24・5%という。

 さらに周産期医療についても、重症の受け入れや相談を行う総合的な医療機関が仙台市に集中。村井知事は赤十字病院や労災病院について、13日の記者会見で「県全体の地域医療を考えると、(仙台市から)少し離すこともあっていいのでは」との考えを示した。

 また各病院の直近5年間の経営は、労災病院が2016年を除いて2億~8億円の赤字で、赤十字病院も9千万~11億円の赤字。がんセンターと精神医療センターには多額の県負担金が投入されている。建物の老朽化も進み、再編で経営の効率化も見込めるという。

 新たな2拠点の立地場所は、どこになるのか――。

 村井知事は未定としながらも、「統合」病院を仙台医療圏南部に、「合築」病院を同医療圏北部にするのがバランス上、望ましいとの立場だ。すでに南部の名取市、北部の富谷市が誘致に手を挙げ、知事も有力な候補地と認める。

 誘致に際しては、名取、富谷の両市から条件面での提案が出ているといい、村井知事は仙台市も含めて「自治体間で競争することになる」としている。

 また立地場所について、村井知事は「知事選で候補者として、私はこう考えるとはっきり言いたい」と説明。選挙で争点化し、5選を果たせば、実現へ動きを本格化させるとみられる。

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 病院と共存してきた仙台市の地元住民からは、移転への反対が噴出している。

 仙台赤十字病院がある仙台市太白区の八木山地区連合町内会の広瀬博会長(80)は「病院は八木山にとって、欠かすことのできない存在だ。なくなることは考えられない」と現地での存続を訴える。

 広瀬さんによると、仙台赤十字病院は1982年に現在の場所に移転して以来、医療の拠点としてだけでなく、地元のイベントや防災訓練に参加し、地域活性化に貢献してきた。「市外に移転するとなれば、この地域はどうなってしまうのか」と危惧する。

 郡和子仙台市長は15日、市議会の代表質問で「(再編構想は)突然の発表で、寝耳に水だ」と答弁。市議から「早期に知事と市長が腹を割って話してほしい」と求められ、郡市長は「ご指摘はそうだと思う。早急にお話をさせて頂きたい」と答えた。

 郡市長は別の市議からの質問に、「仙台赤十字病院と東北労災病院は2病院で市内の救急搬送の約1割を受け入れ、赤十字病院は年間約800件の分娩(ぶんべん)を取り扱っている」と重要性を説明。「丁寧な情報の開示を改めて知事に求める」と話した。

 また医療従事者らでつくる県医療労働組合連合会など4団体も14日、再編方針に反対する抗議文を県に提出。突然見直しの方針が示されたとして、「一切の情報を出さずに協議を進め、一方的に再編方針を押し付ける進め方に厳重に抗議する」と訴えた。