天然記念物の淡水魚、新種と確認 隠れるので名は「カクレトミヨ」

三宅範和
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 山形県内を含む冷水域に分布し、オスが巣を作るなど特徴的な生態で知られる小型の淡水魚「イバラトミヨ」。この名称は、様々な生態型、地方型を含む「総称」とされるが、このうち天童市と東根市に生息し、県の天然記念物に指定されている特殊型が新種と確認され、標準和名「カクレトミヨ」、ラテン語の学名「Pungitius modestus(プンギティウス モデスタス)」と命名された。

 山形大学大学院博士課程前期を今春修了した松本達也さん(24)が在籍中、半沢直人教授(64)の指導を受けてイバラトミヨ特殊型の研究を進めた。今年7月、ニュージーランドの動物分類学専門誌「Zootaxa(ズータクサ)」に、特殊型が新種だと立証する論文を発表した。松本さんは、半沢教授が今年度で定年退職するため、鹿児島大学大学院に移って研究を続けている。

 トミヨ属の魚には、正式に学名が付いて国際的に認められた「有効種」が、国産のミナミトミヨ(既に絶滅)、エゾトミヨを含め11種しかなかった。国産トミヨ属では106年ぶりの新種となった。

 論文では、カクレトミヨが他の11種と、背びれの膜の色や体側のウロコの形状などが明確に異なり、ゲノム解析でも他種と明確に分化していることを示した。標準和名のカクレトミヨは常に藻の中に隠れている行動的な特徴を、学名の「モデスタス」は個体間で激しい縄張り争いをしない穏やかな性質を示しているという。

 半沢教授によると、カクレトミヨの生息地では保護団体がボランティアに近い形で保全活動をしてきたが、渇水などで絶滅リスクが高まっているという。学名が付いて正式に種として認められたことで、「種の保存法」の適用対象になり、国の天然記念物に指定される可能性も高まる。

 半沢教授は「井戸を掘って湧水(ゆうすい)を確保し、川に進出した陸上植物を除去してカクレトミヨが棲(す)める水生植物の群落を復元することが必要」と指摘。「大規模な生息環境の保全・復元工事となると、地元の保護団体や自治体では十分な対応はできない。新種と認められたことを機に、国による手厚い生息環境対策を強く期待する」と話している。(三宅範和)