不起訴から一転起訴 準強制わいせつ事件から3年半 きょう初公判

白見はる菜
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 マッサージ店で女性客にわいせつな行為をしたとして、経営者の男が準強制わいせつ罪で起訴された事件の裁判が16日、京都地裁で始まる。一度は不起訴になったが、検察審査会の「不起訴不当」の議決を受け京都地検が再捜査。事件の発生から約3年半が経過し、起訴に至った。被害に遭った女性は「こんなに大変だとは思わなかった」と、その胸中を明かした。

 起訴されたのは、大阪府堺市の自営業、土岐康文被告(56)。起訴状によると、土岐被告は2018年1月17日午後9時半ごろ~翌18日午前0時ごろ、経営する京都市内の店で、抵抗ができない状態だった当時30代の女性客の上半身をさわるなど、わいせつな行為をしたとされる。

 事件を巡っては、19年6月に京都府警右京署が同容疑で土岐被告を逮捕したが、京都地検は同9月、不起訴処分(嫌疑不十分)としていた。だが、京都第二検察審査会は20年10月、被告が当時の状況を「盗撮」した動画も踏まえ「同意がないのは明白だ」として「不起訴不当」と議決。地検の再捜査を経て今年6月、在宅起訴した。

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 被害に遭った女性は今年7月、朝日新聞の取材に応じ「(起訴まで)時間がかかりすぎた。こんなに大変だとは思わなかった」と悔しさをにじませた。

 被害にあったのは、京都市内のマンションの一室にあったアロママッサージ店。女性は、アプリを使って予約した。口コミ評価は5段階で4~5ばかりで、信用していたという。

 室内には被告と女性の2人きりだった。女性は紙製のブラジャーとショーツに着替えて施術を受けたが、被告の手がブラジャーの内側に入ってきた。「やめてください」と言いたかったが、室内には被告と自分しかいない。「抵抗したら命が危ないかもしれない。台所には包丁もあるはず」と、恐怖で声を出せなかった。40分ほど耐え続けた。

 施術が終わり服に着替えた後、勇気を出して「いつもこんなことしてはるんですか」と、被告を問いただした。「いつもっていうわけじゃないですけど。今日はお代はいいです」と答えたという。帰宅後、女性は友人に相談。翌日右京署に被害届を出した。

 その後、捜査員から被害状況について聞き取りを受けるなど、5回ほど警察署に行った。半年後、逮捕の一報にホッとした。家宅捜索で、被害の一部始終が映った盗撮動画も見つかったと聞かされた。

 だが、「(被告が)同意があると誤信していた可能性がある」として、不起訴処分に。「捜査とはいえ私の盗撮動画を見られて、裁判もさせてもらえないなんて。なぜ被害者ばかり、恥ずかしい嫌な思いをしなきゃいけないのか。これでは、この行為が犯罪にならないことを証明したみたいだ」と悔しかった。

 納得できず弁護士に相談。検察審査会に審査を申し立てた。「絶対に私は悪くない」と、起訴されるまであきらめようと思ったことはなかった。逮捕から起訴まで、警察と検察からの聞き取りは10回を超えた。

 今後裁判では、被害者参加制度を使って被告に質問するつもりだ。「どこに同意があると思ったのか。3年以上経っても許せず、腹立たしさが増すばかり」(白見はる菜)

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 この事件では、被告が被害者の同意があると思っていたとする「同意の誤信」が立件の壁になった。甲南大の園田寿名誉教授(刑法)によると、刑法は、加害者側が違法だと認識して犯罪をする「故意犯」の処罰を原則にしているからだと指摘する。

 ただ、園田氏は「恐怖で抵抗できなかったり、早く命の危険から逃れるため、行為に協力したりする被害者もいる。それを、加害者が100%の同意だと認識したとみなすのは、常識的に不合理」と指摘する。その上で「裁判では、加害者が少しでも『違法かもしれない』という認識をしていたかどうか問われることになる」と話す。