第8回分断された国民、タリバンはまとめられるか 「指導部の考えに変化」

有料会員記事アフガニスタン情勢

聞き手・半田尚子
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東京外国語大学講師の登利谷正人さん 【連載】アフガニスタンを思う⑧

 イスラム主義勢力タリバンが権力を握ったアフガニスタンでは混乱が続き、暴力的なイメージがつきまとうタリバンの言動を世界が注視しています。

 アフガニスタンパキスタン地域研究が専門の東京外国語大学講師の登利谷(とりや)正人さん(40)は、「タリバン指導部の考え方は以前とは変化している」とみています。

 また、「タリバンの統治とは別に、アフガニスタンの人々に危険が迫っている」と話します。

【連載初回】「退避は自分だけ」自衛隊機にただ一人 私がアフガンを飛び立つまで

イスラム主義勢力タリバンが権力を握り、混乱が続くアフガニスタンにゆかりのあるジャーナリストや有識者らに思いなどを取材する連載です。最終回となる8回目では、アフガニスタンパキスタン地域研究が専門の登利谷さんが、タリバン指導部の考え方が旧政権とは変わった点、そしてアフガニスタンの地理的特徴から生じる「別の危険」について解説します。

 ――別の危険とは一体何でしょうか?

 「アフガニスタンの冬です。アフガニスタンには砂漠や平野もありますが、国土の4分の3は山岳地帯です。首都カブールは東京とほぼ同じ緯度ですが、標高が約1800メートルと高所に位置しています。そのため寒さの訪れが早い」

 「8月の『カブール陥落』のニュースを見ていても、日本と比べると厚めの服を着ている人々の姿が目立っていました。12月から2月ごろは冷え込みが厳しく、最低気温が零下20度になることもまれではありません。年によっては降雪もあります」

 「カブールには地方から、多くの人が難民化して押し寄せています。そういう人たちは公園や道ばたにテントを張るなどして、屋外で生活しています。着の身着のままで避難した人々は、経済的に厳しい環境に直面しているため、食料は十分ではありません。このような厳しい環境に置かれた人々が、屋外で冬の寒さの中を生き抜くことは難しいと思います。まずはこうした人々の命を救うために国際社会の緊急援助が必要です」

 ――世界的な新型コロナウイルスの感染拡大もまだ収まる気配はありません。

 「新型コロナの影響で、経済状況の悪化が続いています。政権崩壊前から、経済はもっと悪くなると言われていました。今の国内情勢を考えると、経済状況はさらに厳しさを増し、物価の高騰や物資の不足なども深刻化するでしょう。こうした状況はさらなる難民や国内避難民を生むきっかけになります」

 「政治的な状況で言えば、現段階でタリバンを倒すほどの勢力は存在しません。むしろ社会経済状況の悪化と統治体制の不備が、内戦やタリバン内部の分裂など政情不安につながる可能性が高いと思います」

 ――周辺国にも影響が出るのでしょうか。

 「周りの国はアフガニスタンの状況が『このままではまずい』ということをよく理解しています。多くの難民が隣国へと流出すると、治安や経済の問題につながる可能性があります。さらに内戦に発展すれば、周辺国への影響はより一層深刻となるでしょう」

 「治安と社会・経済状況の悪化により、アフガニスタンがテロの温床となれば、周辺国にとっての脅威となります。周辺国で特に影響が大きいのは、隣国のパキスタンやイランなどでしょう。難民となる人が増えないようにするためには、米国やEU(欧州連合)、日本などを含めた国際的な緊急人道支援が必要です。さらに、アフガニスタンの人々が直面する問題を根本的に解決するためには、継続的に人道・復興支援を進めることが必要です。そのためにはタリバンと対話による交渉を進めなくてはなりません」

寄り合い文化のタリバン 最優先はなにか

 ――タリバンは交渉に応じるでしょうか?

 「タリバンというと、暴力的…

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