女性権利訴える 矢嶋楫子の生涯描く映画 熊本市で撮影
現在の熊本県益城町で生まれ、明治初期から近代日本の女性の権利向上に尽力した矢嶋楫子(かじこ、1833~1925)の生涯を描く映画「われ弱ければ 矢嶋楫子伝」の撮影が9、10日、熊本市内であった。矢嶋楫子を通して男女平等などを訴え、新しい女性の生き方を提示することをめざす作品。公開は来年1月の予定だ。
原作は、北海道旭川市出身の作家・三浦綾子(1922~99)の同名作品。国内の女性監督で現役最年長の山田火砂子さん(89)がメガホンをとった。山田監督は知人のすすめで作品を知り、女性が差別されていた時代にあらがう姿に感銘を受けたという。
矢嶋楫子は現在の益城町一帯を治める惣庄屋の六女として生まれた。25歳で武士と結婚したが、夫の酒乱や暴力で離婚。日本で初めて女性から離縁を申し出たとされる。その後、上京して教師になり、現在もある女子学院の校長も務めた。また、禁酒を提唱する日本キリスト教婦人矯風会を組織し、一夫一婦制の建白や、公娼(こうしょう)制度の撤廃運動などに力を尽くし、女性の権利問題に取り組んだ。
山田監督は、今年2月、東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長(当時)の女性蔑視の発言に「男尊女卑は現代でもはびこっている」と感じ、これをきっかけに、矢嶋楫子を題材とした映画の制作に踏み出したという。
映画は8月にクランクイン。9、10日は全体の最後となる撮影で、熊本市中央区のリデル、ライト両女史記念館などで行われた。校長の仕事をすすめるなど、矢嶋楫子の人生に影響を与えたアメリカ人宣教師のツルー夫人が病院で最期を迎えるシーンの撮影があり、10日でクランクアップとなった。映画を制作する現代ぷろだくしょんの担当者は「最後の撮影は矢嶋さんの出身地である熊本県にこだわった。映画のイメージにぴったりなロケ地だ」と話した。
主演は「愛していると言ってくれ」「ビューティフルライフ」などで知られる常盤貴子さん。来年1月8日に熊本城ホールで試写会があり出演者らの舞台あいさつが予定されている。山田監督は「明治・大正という女性が一人の人間として尊重されなかった時代に、女性解放運動に生涯を捧げた矢嶋楫子のすばらしい生き方が一人でも多くの人の力になればと願う」。映画に関する問い合わせは現代ぷろだくしょん(03・5332・3991)へ。(屋代良樹)
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