ヒット商品づくり 島移住者が活躍

川本裕司
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 高齢化対策として島外からの移住に力を入れ始めて10年目になる山口県周防大島町。Uターンや魅力を感じた移住者が、島の特産物からオイルサーディンや蜂蜜といった新たな人気商品を生み出している。

 島の北側にある浮島(うかしま)の周辺でよく獲(と)れるイワシを生かし、オイルサーディンを商品化したのは「オイシーフーズ」(同町土居)の新村(しんむら)一成社長(47)。浮島で漁業を営む父のもとで生まれ、島内の高校を卒業後に広島市の専門学校に進んだ。自動車関連会社に勤めた後、高校の同級生との結婚を機に島に戻った。

 起業を考えていた2011年、近所でジャム専門店「瀬戸内ジャムズガーデン」を開いていた松嶋匡史(ただし)社長と話した際、「オイルサーディンを作ったら」と勧められた。翌日から試作を始めて半年後に勤めていた食品会社を退職。それまで主に煮干し用だった浮島のカタクチイワシを使い、オリーブオイルと菜種油、生臭さを消す香辛料などを加えたオイルサーディンを製品化し、12年1月にオイシーフーズを立ち上げた。

 長さ6~7センチのイワシ20匹ほどが入り1瓶750円(税込み)を、島内の道の駅などで販売。浮島周辺で採れるヒジキやイワシを乾燥させたいりこも売っている。「地方創生ブームで地方産品が注目され追い風になった」と新村さん。オイルサーディンは年間約2万個売れ、黒字が定着しつつある。

 海の眺めにひかれ、10年に福岡市内のホテルを退職し、妻とともに周防大島町に移住したのは笠原隆史さん(36)。岩国市美和町を拠点とする養蜂家だった父の仕事を継いだ。ホテルの調理師として、国産蜂蜜の貴重さに気づかされたからだった。島内のミカンやクロガネモチなどの花の蜜を集め、翌11年に周防大島町内の道の駅に開いた蜂蜜の店で販売した。

 店頭では、蜂蜜を何に使えばいいのかという問い合わせを何度も受けた。地域の食材を発信しようと、蜂蜜を使った料理を研究。16年にカフェ「カサハラハニー」を同町東三蒲にオープンさせた。プリンやワッフル、チーズケーキなどのメニューをそろえ、コーヒーや紅茶は砂糖の代わりに蜂蜜を用意する。売り上げは順調に伸びていたが、コロナ禍で客足が落ち込んだ。

 店は妻らに任せ、島内の数カ所に置くミツバチの巣箱を巡る日々。カフェなどで売る蜂蜜は堅調だが、蜂蜜を採る体験型のイベントも検討している。笠原さんは「味と香りのバランスが評価されている周防大島のみかん蜂蜜を今後も作り続けたい」と話す。

 周防大島町では町政策企画課の「無料職業紹介所」で仕事の相談に乗ったり、試しで住める古民家「島暮ら荘」を設けたりして移住を推進。中学生までの医療費無料や保育料の完全無償化といった子育て支援策でも移住を後押ししている。(川本裕司)