EU、経済でも中国を牽制 太平洋戦略に「台湾」との関係強化を明記

ブリュッセル=青田秀樹
[PR]

 欧州連合(EU)は16日、インド太平洋戦略の具体案として、台湾との貿易や投資を強化すると表明した。日本や韓国には人権に配慮した人工知能(AI)分野のルールづくりなどで協力を求めた。EUは「誰かと対立するための戦略ではない」とするが、安全保障や防衛に加え、経済でも中国を牽制(けんせい)する内容だ。

 EUの外相にあたるボレル外交安全保障上級代表が、4月にまとめた戦略を肉付けして発表した。成長を続けるインド太平洋地域への関与を深めるEUは、台湾海峡や南シナ海の緊張が幅広く欧州に影響しうるとみており、地域情勢の安定をはかりつつ、民主主義の価値観を共有するパートナーとの連携を急ぐ。

 経済の分野では、世界的に不足する半導体を具体例に挙げ、日本、韓国、台湾と組んで戦略物資の供給網の確立を目指す。また、個別の協定がない相手との関係強化にも言及して台湾の名を挙げた。さらに、AI活用のルールづくりや、データ流通などについて、日韓とシンガポールを対象に「デジタルパートナーシップ協定」の締結交渉を呼びかけた。

 安全保障では、中国の強引な海洋進出を念頭に、航行の自由の確保や法の支配を重視。EU諸国の艦船が従来以上にインド太平洋地域に展開できる方策を探る。共同訓練や艦船の寄港などの機会も増やす。パートナー国の能力構築を支えるほか、日本やインド、インドネシアなどとの協力を強化する。

 ボレル氏は「中国も含めたあらゆるパートナー」が対象だとしながらも、「民主主義のもと、志を同じくする相手と協力を深めたい」と述べた。ことさら強調しているわけではないとはいえ台湾との関係強化の明示は、中国の反発を招く可能性がある。ボレル氏は「物事には微妙なバランスが求められる」とした。

 一方、EUが重要なパートナーに位置づけてきた豪州は米英とともに、インド太平洋地域での新たな安全保障協力の枠組み「AUKUS(オーカス)」の創設を打ち出した。EUの発表に先んじる形になり、相談もなく知らなかったという。ボレル氏は「いい気はしない」との考えを示したうえで、EU独自の戦略づくりや、この地域の重要性が浮かび上がった、と説明した。(ブリュッセル=青田秀樹)