妹が「お兄ちゃんは学校いかないの?」 難民少年工、飲み込んだ思い

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イスタンブール=高野裕介
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 トルコ南部のガジアンテップに暮らす16歳のシリア難民の少年、ザカリヤ・ウベイドさんの一日は、午前6時半に始まる。バスに揺られて1時間弱。向かうのは、靴や布地を扱う小さな工場が集まる一帯だ。そのうちの一軒のサンダル工場での始業は午前8時。接着剤などの化学物質を扱う窓のない作業場にはにおいが充満する。昼休みを1時間はさんで、仕事が終わるのは午後8時。帰宅して食事を済ませると、ベッドに倒れ込む。ザカリヤさんは9歳の時から毎日こんな生活を送っている。学校には行っていない。

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 「今日は少しだけ、悲しい気持ちになりました」。9月上旬の夜、ザカリヤさんに会うと、取材を始めて早々、そんな言葉を口にした。トルコの公立学校で新学期が始まったこの日、同年代の少年たちの通学風景を見て落ち込んでしまったのだという。

 1カ月で手にするのは3500トルコリラ(約4万6千円)。父親の給料もほぼ同じだが、9~15歳の6人の妹と弟を支え、学校に通わせるには長男のザカリヤさんの稼ぎが欠かせない。ザカリヤさんのような大家族はシリア人には珍しいことではない。

 7歳だった2012年春、戦闘が続くシリア北西部アザズ近郊からトルコに逃れた。勉強が特段好きというわけではなかったが、学校の友達とサッカーをするのが楽しかった。トルコに来てからもしばらく学校に通ったが、家計が苦しくて断念せざるを得なかった。今は、仕事で疲れた体を休めるのに精いっぱい。趣味もない。

 「なんでお兄ちゃんは学校に…

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