外国人へのコロナ支援に取り組むベトナム人医師

大貫聡子
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 新型コロナウイルスのワクチン接種はどこで受けられる? コロナのような症状が出たらどうすればいい? 言葉の壁から情報不足に直面する在日外国人は少なくないが、オンラインで日本各地のベトナム人の支援を続ける医師がいる。ベトナム人医師で、京都民医連中央病院(京都市右京区)に勤務するファム・グェン・クィーさん(38)。感染症への不安に寄り添い、診療や相談に応じている。

 「頭痛は残っていますか? 不安や孤独感を感じたりはしていない?」

 8月下旬、テレビ会議システムを使い、クィーさんがベトナム語で尋ねていた。診察を受けた横浜市に住むフアム・ホアン・ヒエップさん(29)は「最近、一緒に住む同僚の1人が感染して心配」「アルバイトに復帰したいが、PCR検査は必要か」と、次々に悩みを打ち明けた。

 来日して3年のヒエップさんは8月上旬に体調を崩した。日本語で横浜市内の病院を受診し、新型コロナと診断されたという。自宅療養中には、39度を超える熱で意識がもうろうとし、日本語で自身の窮状を訴えられるか、強い不安を感じた。回復した今も微熱やめまいが残り、知人を通じてクィーさんを知り相談。「後遺症かと不安だったので、母国語で相談できて落ち着きました」と安堵(あんど)した様子で話した。

 クィーさんは、2002年に来日し、東京医科歯科大学医学部を卒業。その後、京大病院などを経て、現在の病院で腫瘍(しゅよう)内科医として勤務する。厚生労働省試験免許室によるとベトナム国籍の医師免許登録者は数人にとどまるという。新型コロナの感染が広がり始めた昨年から、SNSを通じて日本に暮らすベトナム人向けにベトナム語で医療情報を発信してきた。

 多い時で週6例ほど、新型コロナの相談や診察を頼まれるという。外来診療の合間や仕事が終わった後に相談やオンライン診療に応じる。「思ったよりも多い。言葉や文化が異なり、複雑で多様な困りごとや不安を抱えている。日本のどこに住んでいても、新型コロナに関するあらゆる困りごとに応じられるようにする必要がある」

 自宅療養や症状に関する不安に加え、さらなる課題がワクチン接種だ。

 今年3月、京都府保険医協会とクィーさんらがインターネットを通じて約2千人の在日ベトナム人を対象にアンケートを実施。9割以上がワクチン接種を望んでいたが、6割が無料で接種できることを知らなかった。「接種券が届いても、日本語の表記しかないため、大事な書類であることすらわからない人もいる」とクィーさんは言う。

 調査では「郵送された案内が読めない」「予約できない」「医療従事者と話せない」「副作用で仕事が中断されるかが心配」など多様な心配を抱えていることもわかった。

 厚生労働省はホームページで、ベトナム語を含む17カ国語に翻訳したワクチンの予診票や説明書を掲載するなど、外国人向けの情報発信をしている。だが、自治体によって予約方法が異なるなど複雑だ。

 在日外国人支援を行うNPO法人「CINGA(シンガ)」(東京都)理事の新居みどりさんは、各地の国際交流協会なども電話相談窓口を設置しているが、たどり着けない人も多いと指摘する。「日本語ができる家族や、サポートしてくれる雇用主などがおらず困っている人と、すでにある支援をつなげる仕組みが求められている」として、新型コロナに関し、在日外国人を支援するネットワークを作ることを検討している。(大貫聡子)