気候でも「安全保障」の議論を 日本にもリスク、紛争招いた国も
近年、記録的な豪雨による洪水や土砂崩れなどの災害が相次いでいる。世界各国でも干ばつや山火事など異常気象が原因の被害が増えている。地球温暖化が引き起こす気候変動が、私たちの生命や財産を脅かしている事例だ。そうした気候変動を安全保障上の問題ととらえる「気候安全保障」とはどういうものなのか。朝日地球会議のGLOBEセッション「気候安全保障と地政学」に登壇する国立環境研究所社会システム領域長の亀山康子さん(54)に聞いた。
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亀山康子さんは、10月17~21日にオンラインで開催される朝日地球会議に登壇します。参加費は無料。事前登録が必要です。
――「気候安全保障」は英語の「Climate Security」の訳語で、欧米諸国ではよく使われているようですが、日本ではあまりなじみのない概念です。
気候安全保障という言葉は1990年代から使われ始め、92年にブラジルのリオデジャネイロで開かれた「地球サミット」で広まりました。東西冷戦が終結し、軍事面だけでなく環境面でも安全保障の問題が重要視されるようになりました。地球温暖化や気候変動に他の国際政治課題と同様の危機感を持って対応してもらおうと、「安全保障」という言葉を用い始めた経緯があります。
――亀山さんは、過去の論文や政府の報告書などを分析し、気候安全保障という言葉がどのような定義で用いられているかを4分類して表にしています。
90年代に気候安全保障という言葉が使われ始めた当時は、(1)の「長期的かつ不可逆的な地球規模変化」が中心で、ドイツのコール首相や英国のサッチャー首相、ソ連のゴルバチョフ大統領ら世界の首脳が訴えていました。その後、再び国際政治の舞台に登場したのは2007年。英国政府が国連安全保障理事会で議論するよう提案しました。英国は、気候変動を切迫感のある「人類の危機」という安全保障上の問題と設定することで、京都議定書から離脱してしまった米国を巻き込むねらいがあったと思います。
――国連安保理のように、安全保障というと軍事的なイメージで、気候変動とどう結びつくのかよくわからないという人が多いのではないでしょうか。
最もイメージしやすい気候安…