1本10円?自販機を愛し過ぎた少年、自分だけのを「大人買い」

鷲田智憲
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 自動販売機に魅せられ、「マイ自販機」を購入した男性がいる。山形県庄内町の高橋明さん(44)だ。業者への委託ではなく、自腹で中古機器を購入すると、経営するIT機器関連会社の敷地内に設置。賞味期限が近い商品を不定期に10円で販売するなどの工夫もあって、人の輪が広がるといった効果も出ている。

 真っ白な自販機に30種類ほどの飲み物などが並ぶ。高橋さんが昨年9月、約20万円で購入したものだ。本体に宣伝などはない。通常なら「つめたい」などと書かれている箇所は、庄内弁にアレンジして「はっこい」。値段もまちまちだ。自分の機器だからこそできた。

 自販機に興味を持つようになったのは小学生の時。母親と一緒に行った鶴岡市内の病院にうどんの自販機があった。小遣いで買って食べるのが楽しみだった。高橋さんは「無人の自販機から温かい食べ物が出てくるのが新鮮だった」。自販機の面白さに気づいた。

 大人になり、家族ができると、飲料を箱買いするようになった。ある時、大量の箱を見た高校生の娘(17)から冗談交じりに「自販機ごと買ったら」と言われると、「それならやってみよう」。自販機愛が再燃した。昨夏、事務所を酒田市から庄内町に移転させたのを機に、マイ自販機を設置した。

 最初は家族で飲むために大量購入したお茶や炭酸水を並べていたが、娘から「もっとおいしそうなものを」とのアドバイス。長崎県のみかんや青森県のリンゴといったご当地ジュースなど、これまで飲んでおいしかったものを置いた。目を引くため、冬限定でおでんや焼き鳥なども導入してみた。今の売れ筋は、奇抜な名前の炭酸飲料「お嬢様聖水」だという。

 10円販売も工夫の一つ。業者が、賞味期限が近い飲料品を処分すると1パレット(約60箱)あたり数万円かかるという。商品を安価で購入できる一方、納入時期は不定期となる。これもマイ自販機だから許される。

 失敗もある。ボタンと飲み物がうまくリンクできず、お茶を押したらサイダーが出てきた。同じ飲み物なのに、量が多い方が安かったり……。ペットボトルが入らず、家族でひたすら飲み干したこともあった。

 自身のツイッターで発信していることもあり、利用者は広がりつつある。中部地方や関東ナンバーの車で訪れる人や、約30年ぶりに遠い親戚と再会したこともあった。高橋さんは「自販機を通じて人が巡り合う場所になっている。いずれはカフェのような飲食スペースも作りたい」と話す。

 知名度アップに伴って商品補充の回数も増えている。高橋さんは「本業よりも自販機の仕入れで手間がかかっている。本業よりも忙しくなってしまった」と笑う。(鷲田智憲)