「ほごしゃしか見ていない」?認知度「最下位」の街、小6の試行錯誤

横山輝
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 東京都内に49ある区と市のうち、知名度は49位――。自分たちの住む街の認知度が低いと知った武蔵村山市の小学6年生87人が、あの手この手のPR活動を続けている。紅白出場歌手や売れっ子芸人の協力で喜んだものの、一方で、PR動画の再生回数は伸び悩む。山あり谷ありの経験を通して、子どもたちは少しずつ成長している。

 今月6日の1時間目。市立第三小学校の体育館に、6年生の3クラスが集まった。整列した児童を前に、「発表します」と、1組担任の阿南晃介先生(38)。スクリーンに「3774回」と映し出された。「10万回まであと9万6226回」と添えられている。

 子どもたちが昨年作った、地元紹介のPR動画5本の再生回数だ。学校でコンサートを開いてくれた縁で、紅白歌合戦出場経験があるラッパーのGAKU―MC(ガクエムシー)さんに頼み、曲の提供を受けた。歌詞をつけ、動画を加えてミュージックビデオを作り、のぼりを立てて自分たちで宣伝した。

「りんたろー。」さんもツイート 失敗見つめて「次の一手」へ

 この日は、10万回とした目標再生回数の中間発表。結果は達成率4%に満たなかった。「ほごしゃしか見てない」「音声と画質がわるい」……。子どもたちは、手元のホワイトボードに問題だと思う点を率直に書き出し始めた。

 動画制作の始まりは2年前。武蔵村山市の知名度は都内の市区で「最下位」というネットサイトを児童が見つけたことからだ。PR活動をしようと提案。4年生の時に、総合学習の授業で絵本3冊を作って上野公園や浅草で配った。

 その頃、市内を興行で訪れた人気お笑いコンビ「EXIT」の楽屋を訪ねて絵本を手渡すと、ツッコミの「りんたろー。」さんがツイッターに投稿。2500件を超える「いいね」がついた。翌年にラップ動画を作り、今年6月には栃木県のFMラジオにも呼ばれた。

 阿南先生は「うまく行くことばかりじゃない。だからこそ、取り組みを通してみんなは確実に変わっていった」と言う。たとえば、1組の長田紬(つむぎ)さん(12)。それまでは小さい声の「恥ずかしがり屋」だったが、昨年のラップ動画制作で、作詞を担った8人でばらばらだった意見のまとめ役に自らなった。「苦手なことからは逃げてきたけど、自分からやってみようと思うようになりました」。3組の千葉鉄真さん(11)は何本もの動画をつなぎ合わせる作業から、「情報のどこが大事か」をつかむコツを覚えた。今では校長先生の朝礼のあいさつも、分析の対象だ。「うん、よくまとまってるな、って」

 成長は数字にも表れ始めた。今年5月に行われた全国学力・学習状況調査で、国語の記述問題の無回答の割合が、市や都の平均よりも低かった。阿南先生は「自分の頭で考えて、失敗を恐れず挑戦しよう、と言っています」と話す。

 中間発表の場では、プロに新たな動画の制作を頼もうという意見が出た。しかし、「ギャラ」という社会で当然のやりとりも実感。卒業まで半年。成長を続ける小学6年生は、「次の一手」を考えている。(横山輝)