EU離脱の英国、AUKUSを影で主導 成果誇示も仏とは険悪に

ロンドン=金成隆一、パリ=疋田多揚
[PR]

 米英豪による新たな安全保障協力枠組み「AUKUS(オーカス)」をめぐり、欧州連合(EU)を離脱した英国が独自外交で存在感を示せたと、成果を誇っている。半年前からひそかに計画を進めて米豪の橋渡しをするなど、AUKUS立ち上げに大きな役割を果たしたためだ。

 英タイムズによると、今回の計画が動き出したのは今年3月。原子力潜水艦の所有をめざす豪海軍から、技術供与についての相談が英海軍トップに持ちかけられた。提案は首相や国防相ら英政権中枢の10人ほどで共有され、保秘のため「フックレス」というコードネームで呼ばれたという。

 英国は6月に自国で開催した主要7カ国首脳会議(G7サミット)に、豪州のモリソン首相を招待。期間中にバイデン米大統領を交えた3者会談を開き、ひそかに計画の詳細を詰めた。豪州フランスと結んでいた7・2兆円規模の潜水艦建造計画を破棄することは、発表当日まで仏に漏れることはなかった。両国は8月30日にオンラインで外交・国防相会談を持ったものの、フランスはまったく気づかなかったという。

 ジョンソン首相は発表後の今月16日、「『グローバル・ブリテンのインド太平洋への傾斜(関与拡大)』がどんな意味を持ち、英国にどんな貢献ができるかという疑問があるとすれば、今回の豪州と米国との協力関係が答えだ」と議会下院で誇った。

 「グローバル・ブリテン」は英国がEU離脱後の外交基本方針に据えた考え方。インド太平洋地域を中心に英国が世界との結びつきを強める戦略だ。EU離脱を主導したジョンソン氏にとって、英国だけでも外交成果を上げられると示す好機になった。原潜建造には英国からロールスロイス社などが参加する見通しで、AUKUSによる経済効果も期待されている。

 ほぞをかむのがフランスだ。ルドリアン外相は18日、国営テレビに出演し「我々は英国がいつも日和見主義なのを知っている。(AUKUSの)余り物だ」と述べ、英国は米国に追従したに過ぎないと印象づけようとした。

 フランスは米豪に駐在する大使を呼び戻すと決めたが、英国は対象にしていない。ルドリアン氏は、計画を主導したのは米国だからだと示唆したが、フランスが目指す欧州自前の防衛構想には英国の協力が不可欠。将来の関係をにらみ、英国との外交危機は避けざるを得ない事情もあるとみられる。(ロンドン=金成隆一、パリ=疋田多揚)