長野の温泉街、バイパス計画に揺れる 源泉への影響懸念

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依光隆明
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 古くから宿場町としてにぎわった長野県下諏訪町が国道バイパス計画に揺れている。懸念の声が多いのは温泉への影響だ。かつて下諏訪は中山道唯一の温泉宿場として知られていた。工事によって歴史ある源泉が枯れでもしたら大変、と。表立ってバイパス反対を主張する声はないものの、関係者の間に懸念は根強い。

 江戸時代、下諏訪宿は中山道と甲州街道の交点として知られていた。中山道では難所の和田峠を控え、温泉に入って英気を養う場として。甲州街道では終点の地として。東海道の川越えを嫌う旅人や参勤交代のお殿様が頻繁に下諏訪宿を利用し、温泉を楽しんだ。名湯として知られ、江戸後期の温泉番付では小結。そのときの最高位(大関)は草津と有馬だった。

 宿場の中心にあったのが綿の湯。神代の昔からあったという伝説もあり、いまも源泉として温泉街に湯を供給し続けている。

 「もともと自噴していた温泉です。江戸時代は自噴している湯にそのまま入れる温泉でした」と話すのは綿の湯を持つ下諏訪財産区の議長、井澤勝英さん。現在は地下からくみ上げている。「取る量が増えたために水位が下がったのだと思います。普段は地下60メートルからくみ上げています。静止水位は地下30メートルです」

 国道バイパス計画が、なぜ温泉に関係するのか。井澤さんはこう話す。

 「綿の湯の標高は諏訪湖よりもかなり高い。そこで自噴していたわけだから、温泉の水は諏訪湖由来ではない。山からだと思う。その山にバイパスのトンネルができるのですから、(温泉となる)地下水に影響があるのではないか。少なくとも『影響がない』とは言えないと思います」

 バイパスは国道20号の交通量増加を予想して計画された。通称は諏訪バイパスで、予定ルートのほとんどがトンネル区間。

 「温泉の水は破砕帯に沿って出ているといわれています。しかし本当のメカニズムは分かっていません。どう湧いているのか、科学的には解明されていないんです。トンネルが温泉にどういう影響を与えるか、非常に懸念をしています」

 綿の湯の源泉は旅館街に供給している。近隣の源泉は財産区の公衆浴場に供給し、大人240円という低価格で住民や観光客を入湯させている。その収入で財産区を維持しているのだから、仮に温泉が湧かなくなったら財産区も旅館街もダメージはすさまじい。

 「この辺の旅館は綿の湯のお湯を使っています。全部そう」と話すのは、下諏訪温泉旅館組合の組合長を務める旅館「ぎん月」の武居智子さん。「下諏訪は温泉の文化が根付いている街です。お湯が出る水道が街中にたくさんあるし、そこからお湯をくんで普段の生活に使っていました」

 井澤さんと同じく、武居さんもバイパス建設を懸念している。温泉に根ざした生活、文化が崩されるのではないか、と。女将(おかみ)になる前、武居さんは東京の出版社に務めていた。

 「一度都会に出た私みたいな人間の方が温泉や文化の大切さを感じるのかも。泉源が枯れたら別から引けばいいじゃないかと言われたんですが、それは違う。ここに温泉がある幸せをもっと大事にしないと。未来の人にとって道路がいいのか、自然を残した方がいいのか。百年後に『バイパスなんて要らなかった』と言われるのは嫌ですね」

 バイパスの建設主体は国で、下諏訪町諏訪市も建設を推進している。表立って反対する声はない中、住民の一部は勉強会を重ねてバイパスの影響を学んでいる。(依光隆明)

■住民勉強会 「科学的な根拠…

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