「孤狼の血」シリーズ第3弾制作決定 白石和彌監督の語るヤクザ映画

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土井恵里奈
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 二度あることは三度ある。公開中の東映映画「孤狼(ころう)の血 LEVEL2」の続編制作が決まった。シリーズとしては第3弾。観客から「夜勤明けの眠たさもぶっ飛ぶ」「最高に興奮」「同じ映画を何回も映画館で見たのは初めて」などと反響が大きく、東映や白石和彌(かずや)監督のもとにはシリーズ継続熱望の手紙が多数寄せられていたという。東映の多田憲之代表取締役会長は「時代に風穴を開ける作品を作り続けることが東映の使命ですので、続編の決定を致します」とコメントしている。

「映画が殺し合いを描かぬ時代に」

 「日本で一番悪い奴(やつ)ら」(2016年)を撮ったのに、また、いやもっと悪い奴らを撮ってしまった。白石和彌監督の「孤狼(ころう)の血 LEVEL2」。とにかく危ない。もはや絶滅危惧種になった、ヤクザ映画のド迫力。このご時世、どうやってこんな映画を作ったのか。話題作の舞台裏を聞いた。

孤狼の血 LEVEL2

原作は柚月裕子の同名小説シリーズ。前作は役所広司主演で、日本アカデミー賞12部門など30を超える映画賞を獲得した。オリジナル脚本となる今作は、狂騒の広島を舞台に、前作よりさらに激しいバイオレンスシーンが続く139分。刑事の日岡(松坂桃李)とヤクザの組長上林(鈴木亮平)の死闘、スパイ役の近田(村上虹郎)との絆を軸に、警察と裏社会の関係を描く。同じく東映の極妻シリーズでおなじみのかたせ梨乃は、今作でも極道の妻を演じた。

「ヤクザお断り」の今

――昔のヤクザ映画は、本物のヤクザに密着して撮った作品が多いそうですが、今では難しい。どうアプローチしましたか

 昔はヤクザが(ロケの)交通整理に来ていましたね。(撮影が)終わったら「うちのオヤジ(親分)が飲みたがってるんでどうぞ」とか。飲みながら、「あの時のカチコミ(殴り込み)どうだったんですか」「刑務所はどんな生活なんですか」と聞くわけじゃないですか。

 今は聞けない。役者は大変ですよ。そういう時代に、どう演じればいいんだっていう話。OBや足を洗った人の話を聞くとか、それこそもう「仁義なき戦いを見てください」になる。時代劇として作っていくものになりつつあります。

――ロケ地の広島の反応は

 最初は「うちはもうヤクザと関係ないんで」と言われました。前作の時です。「仁義なき戦い」で菅原文太さんが演じた親分と縁のあった場所があるんです。「撮影できませんか」と言うと、断られた。

 でも、前作を公開して変わった。作品を見て分かってくれたんだと思います。ロケ地マップも呉市などが作ってくれました。ここに組があって、銃撃戦があって、ここで誰かが殺されて、みたいな。ちょっと大丈夫かと思いましたが。

――地元のバックアップを得られたことは大きかったんですね

 大きなことでした。広島には地の力というか、変わらない風景がある。物語の登場人物たちの普段見ているであろう景色を撮ることが、作品へのインスパイアになりました。

 役者もそうです。広島に来るという行為が既に役作りなんです。広島以外の選択肢はありませんでした。

――呉弁のセリフは迫力がありますね

 広島の言葉で怒鳴り合いたい、がなり合いたいという、憧れのような気持ちが役者にはあります。いろんな役者に「私も広島に連れて行ってください」って言われるんです。刑事役でオファーすると断られたりもして。ヤクザ役がいいそうです。楽しいんだと思いますよ。そこは皆一様に言いますね。

ちゃんと暴れる映画を

――どんな心境で今作品を作りましたか

 プロデューサーからは「長らくこういう作品を作っていない。とにかく暴れ倒してほしい」と言われました。「韓国映画に先に行かれているので、尻尾をつかんでほしい」と。

 前作は日本アカデミー賞を頂いて、妙に褒められてしまった。ありがたいんですが、それで良かったのかという思いも。もう一度原点に返り、ちゃんと暴れる映画を作りたいと思いました。

 このごろは、藤井道人監督の「ヤクザと家族 The Family」、西川美和監督の「すばらしき世界」とか、ヤクザの人権を題材にした映画が続いています。たしかに、いまはしのぎも少なくて生活は苦しい。掘り下げていくと、切なくはなります。

 でも、ヤクザが素人を食い物にしていることはちゃんと描くべきだと思っています。それに、東映が撮る映画ならば「ヤクザはクズですけど」みたいな作品を作る方がいい。今回は前作よりアクションを激しく、エンタメ度を高めました。

――凄惨(せいさん)なバイオレンスや激しいアクションシーンが目白押しですが、暴力を描く意味は

なぜ、今ヤクザ映画か 東映「孤狼の血」続編から考える

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 暴力を肯定してるつもりはな…

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