難聴の17歳、学校初の快挙 電気工事士の試験に合格

高木文子
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 扇風機やパソコンを分解する「メカ好き」の少年が今夏、第2種電気工事士の試験に合格した。岐阜県立岐阜聾(ろう)学校の高等部3年、野村光生(こうき)さん(17)。右耳はほとんど聞こえないが、電気配線への興味が高じて資格を取った。資格試験の勉強を通じて「手先が器用になった」と自信もついた。卒業後は自動車の製造現場で働きたいという。

 野村さんは先天性の難聴があり、両耳に補聴器をつけて生活してきた。

 幼いころからおもちゃや家電を分解するのが大好きで、おもちゃ箱はばらした部品でいっぱい。小学4年になると、父・哲さん(47)が譲ってくれた古いノートパソコンを分解し、冷却部品に電池をつなぐ実験をした。「電気は見えないけれど、動くんだ」と興味を持った。

 地元の公立中学校に進み、理科でオームの法則を習うと、電子部品や配線への興味が膨らんだ。工業高校の電気科に進みたかったが、耳の状態に合わせて学べる聾学校の高等部を選んだ。

 第2種電気工事士は、一般家庭や店舗など600ボルト以下で受電する設備の工事ができる資格。筆記試験と電線の接続などの技能試験がある。昨春から、参考書やインターネットの動画を見ながら、ほぼ独学で学び始めた。

 岐阜聾学校にはこれまでこの資格を取った生徒はいない。商業科の西脇靖和教諭(47)は野村さんの勉強を支えようと同じ資格を取ろうと決意。一緒に問題を解いて勉強した。「好きなことを追究できるところがすごい」と野村さんの学ぶ姿勢に感心する。

 昨年秋、2人とも筆記試験に合格。ところが12月、それまで補聴器をつければ聞き取れていた野村さんの右耳が、急に聞きづらくなった。資格の技能試験を1週間後に控え、「ちょっと混乱しました」と野村さん。試験は野村さんだけ不合格だった。

 右耳の聴力が失われた原因は検査で分からなかった。左耳は補聴器をつければ聞き取れる。「もっと原因を調べた方がいいのか」。そう思い詰める野村さんに、母・容子さん(43)が「原因ばかり調べるよりも、前向きに生きていくことを考えよう」と励ました。「2回目の試験は絶対、合格したい」。再び、気持ちを切り替えた。

 技能試験は電線の接続など1人でできる作業で、難聴によるハンディは感じないという。ただ、試験の開始と終了の合図が聞きにくいため、再び挑んだ7月の試験ではスタッフに肩をたたいて知らせてもらった。見事に合格した。「電気自動車などを造る現場で働きたい」と夢を語る。

 実は、電車が走るときの音も好きで、趣味で各地の電車の音を聞く「音鉄」を自認する。JR線の駅の近くに住むが、通学は少し遠回りして好きな音がする名鉄電車にしている。駆動音に耳をこらし、振動を感じ、頭の中で部品の動きをイメージする。「聴覚障害があるのに『音鉄』って不思議でしょう? でも、好きなものは分かるんです」(高木文子)