3K職場を変えたい ふるさとを活性化したい 女性たちの思い

編集委員・中島隆
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 【大阪】工場やオフィスを有害生物などから守り、消毒をしている「イカリ消毒」(本社・東京)。その大阪オフィスに、新規事業開拓の特命チームがあります。メンバー12人は全員女性。この9月、故郷のピンチを救いたいと旗を揚げた兵庫県の女性起業家と手を組み、こだわりのせっけんの販売を始めました。チームの社員と起業家のオンラインでの打ち合わせは共通の話題で大盛り上がり。その話題とは……。

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 イカリ消毒は、1959年に創業。全国各地と東南アジアにおよそ100カ所の拠点がある。社員は1500人ほどで、事業の最大の柱は工場やオフィスの衛生管理だ。コロナ禍で、担う役割は重要度を増している。

 2013年、大阪出身で関西学院大を卒業したばかりの木谷あゆみさん(30)が入社した。当時、新卒社員は約30人で、そのうち女性は2割ほどだった。

 男女関係なく、害虫駆除の現場を経験する。木谷さんら女性社員も、薬剤が入った重さ20キロのボンベを背負い、操業していない真夜中の食品工場などに入った。「小動物」に出くわすこともあった。

 世の中を支える大切な仕事だ、苦ではない。けれど、暗い、汚い、臭いの3K職場だと思った。この仕事を長くつづけている先輩社員たちはスゴイ、と尊敬した。

 15年、木谷さんは「働き方を変えて、会社の3Kイメージを払拭(ふっしょく)しましょう!」と声を上げた。

 女性社員でどこに問題があるのかを意見交換していった。男性社員からも、「女性が活躍できる会社にならなきゃ未来がない」と、木谷さんの志に賛同する声が上がった。

 大阪常勤の女性役員の強力なバックアップをえた。ユニホームをおしゃれにし、新卒採用は男女半々、などを実現してきた。

 けれど、今のままでは衛生管理の仕事の延長から抜け出すことは難しい。新たな事業を考える必要があった。会社も本気になった。

 19年、新規事業を開拓する女性だけの特命チーム「さくらいふ推進室」を結成。桜が咲くように、安全で豊かな社会をつくりたいという思いをこめた。

 メンバーは木谷さんら12人。「私たちの強みは何?」など、何度も話し合った。

 それぞれが母親であり、妻だった。親の介護をする者もいた。自分たちがターゲットになれる事業をしよう。幼稚園や小学校向けの手洗い教材をつくったり、保育園に出向いての手洗い指導をしたりした。

 チームの中に、元タカラジェンヌがいた。昨年夏、タカラヅカ時代の同期と結びつけてくれた。

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 兵庫県宝塚市北部にある上佐曽利(かみさそり)地区の農村に広がるダリア畑。そこに「ダリアジェンヌ」という会社がある。

 社長はこの地区出身の梓晴輝(あずさはるき)さん(36)。宝塚歌劇の男役として「ベルサイユのバラ」などの舞台を踏むも、母親のがん闘病をきっかけに7年で退団。東京でヘルパーの資格をとる。

 厳しい現場にも出向いていった。たとえば、ゴミ屋敷。せんべい布団で寝る高齢者の世話をした。「小動物」が走り回っていた。

 結婚をきっかけに、ふるさとの農村に戻った。梓さんはショックを受けた。ダリアの栽培が盛んだった農村はさびれていた。子どものころ、村の人たちは、「あーちゃん」とかわいがってくれた。宝塚音楽学校に合格したときは、みんなでお祝いしてくれた。

 恩返しを決意。2020年春、梓さんはふるさとをPRする「ダリアジェンヌ」をつくった。ダリア農家の3代目として栽培を手伝いながら、栄養価の高いダリアの球根をつかった化粧品をつくっていく。市のふるさと納税品に起用されるなど人気商品となった。

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 20年夏、さくらいふのメンバーと梓さんは、パソコン画面上で出会った。オンライン会議を重ねてアイデアを出しあい、この9月、「さくらいふ石鹼(せっけん)」の販売を始めた。梓さんが開発した球根をつかったせっけんを、木谷さんらが手がけたパッケージで包んだ。

 会議の途中、木谷さんと梓さんは、「小動物」の話で盛り上がり、絆を深めた。その小動物とは、ネズミである。(編集委員・中島隆)