ワクチン100万回・五輪の水際対策…菅政権1年の発言、真偽を検証

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 朝日新聞は、日本でファクトチェックを推進するNPO「ファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)」にメディアパートナーとして加盟しました。ネット上に広がる言説や政治家の発言などが事実に基づいているかを検証するファクトチェックについて、FIJの判定基準をもとに報じていきます。新しい基準で、過去の国会審議などの発言を判定するとどうなるか、ファクトチェックしてみました。

菅義偉首相の発言】

「ワクチン接種が順調に進んでいます。昨日は100万回を超えてきました」

(2021年6月9日の党首討論)

【判定結果】

 菅義偉首相は6月9日午後の党首討論で、新型コロナウイルスのワクチン接種について、「順調に進んでいる。昨日は100万回を超えてきた」と述べた。首相は5月7日の記者会見で「1日100万回の接種を目標」と打ち出したが、目標に到達したとの認識を示す発言だった。

 しかし、首相が発言した6月9日時点では、首相官邸が公表していた8日の接種回数は約63万9千回だった。このため、野党からは「事実と違う」(立憲民主党泉健太政調会長)と批判の声が上がり、複数のメディアも実際は達成していない可能性を報じていた。

 確かに首相官邸は8日のワクチン総接種回数を、前日比で約102万人増えたと公表していた。ただ、この数字は、何日か前に打った回数を自治体が後からまとめて入力する「過去分」も含まれており、1日に打たれたワクチンの回数ではない。加藤勝信官房長官は9日午前の記者会見で「報告が少し遅れて出てくるということもある」「累積の接種回数は、高齢者に関しては前日と今日との差分を見ているわけだが、その差分には昨日の接種回数プラス一昨日以前で後から報告が上がってきたものも入ってる。最終的に1日100万ということになれば、その日の接種回数が100万ということですから、少し遅れて確認していくということになる」などと述べ、8日時点で100万回に達しているかは確認できていないとの認識を示した。

 党首討論後の9日夜、記者団から数字の根拠を問われた首相は「どこで100万回というのは分からないが、このところは大体その数字になっている」と発言。根拠を明らかにすることはできなかった。

 政府でワクチン接種の調整を担う河野太郎行政改革相は同月11日の記者会見で、後から入力されてくる分を推計しても「80万回分くらい」との認識を示した。党首討論の段階で判定すると、100万回を超えたというのは「根拠不明」だったと言える。

 その後、自治体による入力が進み、首相官邸による9月20日時点の集計では、6月8日の接種回数の実績は111万7871回となっている。100万回を上回っており、結果的に首相の発言は正しかったと言える。

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FIJのガイドラインに基づき、検証対象の言説や情報を「正確」「ミスリード」「虚偽」など、9段階で真実性や正確性を判定。朝日新聞社は公正性や透明性を重んじ、判定に至った根拠や理由を示しながら、真偽が定かでない言説の検証にいっそう力を入れていきます。

【菅義偉首相の発言】

「このオリンピックというのは、まさに海外の選手の人たち、入ってくる方たちと完全にレーンを分けてますから、そこは一緒にならないようにしております」

(2021年7月30日の記者会見)

【判定結果】

 東京五輪が開会して1週間が経った7月30日、菅義偉首相は新型コロナウイルスの感染拡大を受け、緊急事態宣言の対象を拡大した。その際の記者会見で、「甘い根拠なき楽観主義のもとで五輪を開催していることが感染を引き起こしているのではないか」との質問が出た。

 これに対し、首相は「水際対…

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