子どもの本で平和をつくる 敗戦直後のドイツ、奔走した女性の物語

会員記事

松本紗知
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 素晴らしい子どもの本は、人々が理解し合うための「かけ橋」になる。そう信じて、戦後のドイツから、子どもの本で平和をつくろうと世界に呼びかけた女性がいます。彼女が信じた本の力とは、どのようなものだったのでしょうか。

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イエラ・レップマン(1891~1970)=JBBY提供

 女性の名前は、イエラ・レップマン(1891~1970)。第2次世界大戦直後の1946年に、ドイツで世界各国から送ってもらった子どもの本による図書展を開き、49年に世界で初めての国際児童図書館(独ミュンヘン国際児童図書館)、53年に子どもの本に関わる世界的ネットワークの国際児童図書評議会(IBBY)を創設した。

 IBBYは日本を含む約80の国と地域に支部があり、子どもたちに優れた本を届け、本を通した国際理解を進めるための活動を行っている。

 そのレップマンの行動や、思いを題材にした絵本「子どもの本で平和をつくる ~イエラ・レップマンの目ざしたこと~」(小学館)が、7月に刊行された。

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「子どもの本で平和をつくる ~イエラ・レップマンの目ざしたこと~」キャシー・スティンソン文、マリー・ラフランス絵、さくまゆみこ訳、小学館

闘いが嫌いな牛、とっても強い女の子…

 戦争で荒れ果てた街で、おなかをすかせた少女アンネリーゼは、大きな建物に人々が並んで入っていくのを見つける。弟と一緒に中に入ると、そこにはたくさんの本が並んでいた。アンネリーゼは、そこである女の人(レップマン)と出会い、闘いが嫌いな牛の話(「はなのすきなうし」)や、とっても強くて馬も片手で持ち上げる女の子の話(「長くつ下のピッピ」)を聞かせてもらう……。

 絵本は、レップマンがドイツで開いた図書展を舞台にしたフィクションで、会場を訪れた姉弟の姿を通して、本が与えてくれる希望や力を描いている。巻末には、レップマンに関する解説もつけられている。

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「子どもの本で平和をつくる ~イエラ・レップマンの目ざしたこと~」(キャシー・スティンソン文、マリー・ラフランス絵、さくまゆみこ訳、小学館)から

 原書は2020年にカナダで出版された。今回の日本語版の編集を担当した小学館の喜入今日子さんは、「つらい思いをしている子どもたちに光をあてていて、同じく、つらい思いをしている子どもたちが『本を読めば、希望が見えるかもしれない』と思ってくれたらうれしいと思った。そして、本を手渡す大人たちへも、メッセージが込められた本だと感じた」と、出版を決めた理由を話す。

「私たちは2度も攻め込まれた」

 巻末の解説では、レップマンが図書展を実現させた経緯も説明されている。

 世界各国から子どもの本を集める計画だったが、多くの人は「戦争でドイツの敵だった国々が、本を送ってくれるはずがない」と考えていた。

 しかしレップマンは、自分の…

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