福岡の基準地価、伸び率全国1位 40年ぶり
福岡県は21日、土地取引の目安となる基準地価(7月1日時点)を公表した。全922地点の変動率は1・9%のプラスで、40年ぶりに全国1位の伸び率となった。昨年は新型コロナウイルスの影響で取引を控える動きが見られ、前年比の伸び率が縮まったが、今年は需要が堅調で、再び上昇幅が拡大した。
用途別の変動率は住宅地が1・5%(前年0・8%)、商業地2・7%(同2・1%)、工業地4・4%(同1・8%)。全国順位では商業地が1975年の調査開始以来、初めて1位(前年3位)になった。住宅地(同2位)と工業地(同6位)は、それぞれ沖縄に次いで2位だった。
コロナ禍で不動産の賃貸市況が落ち込むのと対照的に、売買市況は金融緩和による金余りを背景に持ち直したという。日本不動産研究所九州支社の高田卓巳次長は、3大都市圏と比べて福岡市や周辺の商業地には需要が堅調なマンション用地が多く、全体の上昇率に寄与したと指摘する。
こうした状況から、同じ商業地でも、集積する業種によって明暗は分かれた。高級ブランド店が並ぶ一等地や、コロナ禍で売り上げを伸ばした家電量販店などを建てる郊外型の商業地の取引は堅調だった。博多駅周辺では、ホテル用地の高値取引も再び出てきたという。
一方、飲食店のひしめく福岡市の中洲地区は、長引くコロナ禍の影響で賃貸の収益性が悪化し、市内で唯一前年から下落した。
また、福岡市中心部のオフィスの賃貸市況にも陰りが出ていると高田次長は指摘する。
商業地の価格1位は5年連続で福岡市中央区天神1丁目12の3(1平方メートルあたり850万円)だが、伸び率は横ばいに。再開発が続く天神・博多地区ではこれ以上の賃料の上昇が見込みにくく、「投資への採算の観点から、地価上昇にブレーキがかかっている」。代わりに中心部から近く、割安感が残る地域の地価が高い上昇をみせた。北九州市や久留米市でも、商業地は5年連続で上昇した。
住宅地の価格1位は、昨年に続き福岡市中央区御所ケ谷2の40(同44万3千円)。地下鉄薬院大通駅の徒歩圏内にある高級住宅地だ。変動率では同駅や地下鉄六本松駅、JR竹下駅周辺が上位を占め、中央区や博多区など利便性が高い地域で上昇がみられた。北九州市は前年の横ばいから2年ぶりの上昇をみせ、福岡市へ通勤ができる飯塚市は24年ぶりに上昇した。
工業地は物流施設の土地需要などを背景に、志免町が18・7%(前年9・1%)、宇美町が12%(同7・4%)など高い上昇率となった。価格が上昇した市町村も前年の15市町から20市町に増加。大牟田市や小竹町、桂川町などでは平成初期以来の上昇となった。(神野勇人)
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