「妻を殺した私に重い刑を」述べた夫に無罪判決 心神喪失の疑い指摘

榎本瑞希
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 昨年6月に長崎県時津町の自宅で無理心中を図って妻(当時72)を刺殺したとして殺人罪に問われた男性被告(78)の裁判員裁判の判決公判が21日、長崎地裁であり、潮海二郎裁判長は無罪(求刑懲役5年)を言い渡した。事件当時、重症のうつ病で心神喪失状態だった疑いが残るとした。

 判決は事件前の夫妻の生活状況について、妻の骨折や被告自身の白内障などの不調はあったものの「将来を悲観しなければならないほどのものではなかった」と指摘。起訴前の精神鑑定を担当した医師の証言から、動機にはうつ病による認知のゆがみが大きく影響したと考えられるとした。

 検察側は心身耗弱にとどまり責任能力はあったと主張していたが、判決は「犯行を思いとどまることができる能力を欠いていた合理的な疑いが排斥できない」と退けた。

 被告は公判で起訴内容を認め、13日の結審で「これまで支えてくれた妻を殺してしまった。より重い刑の判決が出されることを願っております」と述べていた。判決言い渡しの後、潮海裁判長は被告に「きちんと医療を受け、生き抜いてほしい。生きることで償いをしてほしいと思います」と説諭した。

 長崎地検の鶴田洋佐次席検事は「判決内容をよく検討し、上級庁とも協議の上、適切に対応したい」とのコメントを出した。(榎本瑞希)

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