「エンタメの景色が変われば……」パラ開閉会式が示した近未来の日常

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野村周平
【動画】式典ステージアドバイザー栗栖良依さんが振り返る東京パラ開閉会式=藤原伸雄撮影
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 東京パラリンピック開閉会式には障害のあるキャスト約270人が出演し、その半数以上は公募で選ばれた。車いすの少女、全盲のギタリスト、自閉症のダンサー……。開会式で主人公の「片翼の小さな飛行機」を演じた中学2年生の和合由依さんもその一人。全国規模のオーディションを実施し、式のステージアドバイザーを務めた栗栖良依さんは「私の中で(主役は)和合さんしかないと思っていた」と振り返る。

 コロナ禍で大会が1年延期となり、昨年まで予定していた演出内容は白紙に。新たに競技場を飛行場に見立てた物語とすることになり、制作陣で主人公を探している時、栗栖さんは、演技経験のなかった和合さんを「めちゃくちゃ推した」という。

 「オーディションで彼女は一人で質問にてきぱきと受け答えして、こちらのムチャな振りにも応じてくれた。お母さんはその場に一切出てこなかった。この子は信頼できる。この子しかいないと思った」

 和合さんは生まれつき、両足や左手が自由に使えない。しかし、学校では吹奏楽部に入るために努力して家族や周りを認めさせ、学校で生徒会役員を務めるなど、チャレンジ精神が旺盛だった。オーディションでは、大好きだった志村けんさんの「あいーん」の物まねも披露した。

 表現活動を通じて多様性のある社会をめざすNPO法人「スローレーベル」を運営する栗栖さんは、障害のある人たちが参加する舞台やイベントの制作に長く関わってきた。その経験が、和合さんへの「信頼」を重視させた。

 「障害のある子たちは稽古を続けるのが難しい。途中で挫折することは日常茶飯事です。舞台をやり遂げるほうが少ない。どんなにかわいくても、上手に踊れても、リハーサルに来てくれない子は選べない。その点、彼女には半端ない信頼があった」

 「だから今回、和合さんだけでなく、全員が最後までやり切ってくれたことは大きい。1~2割は脱落すると思っていた」

 簡単ではなかったが、約半年の稽古を重ね、本番にたどり着くことができた。

くりす・よしえ 1977年生まれ。2010年に骨肉腫を発症し、右下肢機能全廃に。横浜市のNPO法人「スローレーベル」理事長。記事後半では、栗栖さんのロングインタビュー動画をご視聴いただけます。

 栗栖さんが開会式で特にこだわった演出は二つあったという。

 一つはギタリストの布袋寅泰

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