総裁選の風の行方は 九州一の都会抱える福岡2区 神経とがらす陣営

2021衆院選

神野勇人 藤山圭
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 自民党総裁選の動向は、直後に控える衆院選の情勢に影響を与えることが必至だ。とりわけ都市部の選挙区は無党派層の割合が高く、与野党の陣営は世論の風の行方に神経をとがらせている。

 九州一の都市型選挙区とされる福岡2区。福岡市中心部の天神を抱え、住民の転出入も多い2区では毎回、与野党の陣営がしのぎを削ってきた。

 「引き続きご指導よろしくお願いします」。九州大跡地の再開発で真新しいマンションや商業施設のビルが立ち並ぶ福岡市中央区の地下鉄六本松駅前。総裁選告示日翌日の18日夕、立憲民主党現職の稲富修二氏(51)は約2時間、歩行者に手を振り、名刺を手渡し続けた。

 人通りの多い駅前や交差点での辻立ちはいつも通りだが、総裁選に注目が集まれば無党派層が自民に流れるのではと警戒を強める。

 菅義偉首相が総裁選不出馬を表明するまで、陣営は衆院選への手応えを強めていた。コロナ禍への対応で内閣支持率は低下。野党への追い風に加え、立憲現職のいる選挙区には共産候補を立てない野党共闘の基本合意により野党の足並みもそろった。立憲の枝野幸男代表をあえてポスターに載せずに「立憲色」を薄め、幅広い無党派層に支持を訴えかけてきた。

 ところが、菅首相の退陣表明で風向きは一変。総裁選告示直前の朝日新聞社の世論調査では、自民の政党支持率が前月の32%から37%に上がり、立憲は6%から5%になった。メディアやネット上での野党の埋没は明らかで、稲富氏の陣営関係者は「自民の支持率上昇は仕方ないが、立憲の訴える政策が浸透していない」と頭を抱える。

 緊急事態宣言で集会も開けず、街頭演説も自重せざるを得ない。有権者への浸透には辻立ちしか手段がないのが現実だ。稲富氏は「無党派層には、とにかく顔をあわせること。活動量を維持しないといけない」と語る。

 日本維新の会から立候補する新顔の新開崇司氏(50)も街頭での無党派層への訴えに力を注ぐ。自民党と一線を画した「しがらみのない政治」をめざすと訴える。有権者の関心が衆院選より総裁選にあると認めつつ「首相が代わるから自民党のままでいいという声はあまり聞こえない。自身の活動を日々積み上げていくしかない」と話す。

 自民現職の鬼木誠氏(48)は総裁選を契機に形勢の巻き返しを狙う。支援者から「菅首相を変えた方が良い」との声が寄せられていただけに、陣営関係者は「どの候補が総裁になっても菅首相よりマシ。総裁選の盛り上がりは衆院選にプラスにしかならない」と計算する。

 鬼木氏は現在3期目。当選回数の少ない「若手議員」の一人として、派閥によらない自由な投票を主張する。「女性候補も2人いてバランスが良い。議論が注目を浴びるほど党の多様性を示すことができる」と「総裁選効果」に期待を寄せる。

 鬼木氏自身は誰に投票するかを明かしていない。新しい「党の顔」との距離は、衆院選での勢いに直結する。支持者内でも投票先が割れていることもあり、告示直後のSNSで「4人の候補の政策をよく聞いて、一票を行使したい」と書き込むにとどめた。

 だが、衆院選までは1カ月以上あり情勢は不透明だ。新総裁の采配や総裁選後に控える臨時国会での論戦次第で、都市部の「風」は順風にも逆風にもなりうる。鬼木陣営の関係者は「都市型選挙は風に頼らないといけない部分もあり、この勢いに乗っていきたい」。稲富氏は「世論はその時々で変わる。緊張感を持って臨まないといけない」と気を引き締める。(神野勇人)

 福岡2区を巡っては、無党派層投票行動が選挙結果に影響を及ぼしてきた。

 朝日新聞が衆院選で実施してきた出口調査によると、政権交代した2009年に稲富氏が無党派層の7割の支持をまとめ、自民重鎮の山崎拓・元副総裁を破り初当選した。

 自民が政権復帰した12年は、稲富氏への無党派層の支持が低下。鬼木氏と同じ3割ほどとなり、自民支持層の8割を押さえた鬼木氏が初当選した。稲富氏は、無党派層からの票を失ったことが敗因につながった。

 一方、稲富氏は14年に再び無党派層からの支持を約53%まで回復。鬼木氏に敗れたものの、票差を12年の約3万7千票から約1万8千票に縮めた。さらに17年も58%と無党派層に浸透して約8千票差とし、比例で復活当選を果たした。

 総裁選で決まる「選挙の顔」や、これまでの政府の新型コロナウイルス対策について、無党派層がどのように考え、投票行動に反映されるのかが福岡2区の勝敗のカギとなりそうだ。(藤山圭)

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