安倍総裁が去り1年、低調な改憲論議 自民党総裁選

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編集委員・藤田直央
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自民党総裁選の候補者共同記者会見で拳を合わせる、(左から)河野、岸田、高市、野田各氏=9月17日、東京・永田町
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 連日4候補の訴えが続く自民党総裁選憲法改正でも姿勢の違いが浮き彫りになっているが、論議は低調だ。歴代最長政権を率い、改憲を唱え続けた安倍晋三首相(党総裁)の退陣から1年での様変わりだ。

 安倍氏が昨年8月に健康問題で首相辞任を表明したことを受けた前回の総裁選では、当時の菅義偉官房長官が安倍路線の継承を訴えて圧勝した。だが、今回は趣が異なる。

 候補者たちは安倍政権当時から長引くコロナ禍への対策や、党改革といったテーマで、これまでからの変化を語る。公文書改ざんといった不祥事に関する質問にも反省を述べる。

 安倍路線の象徴である改憲の論議は熱を帯びない。自民党のホームページには、4候補の「所見」が壁新聞のようなイメージで載っているが、改憲に触れるのは河野太郎行政改革相と高市早苗総務相の2人で、1行ずつだ。

 河野氏は、「所見」に「立党の精神に立ち、新しい時代にふさわしい憲法改正を」と記すが、発言は安全運転だ。17日の党本部での4候補共同記者会見では「自民党が4項目をあげている。野党にもいろんな提案があるでしょう。国会でしっかり議論し、まとまったものから進めていくことが大事だろう」と語った。

 4項目とは、安倍氏が総裁当時の2018年にまとまった党の改憲指針を指す。自衛隊の明記、緊急事態対応、参院選での合区解消、教育充実だ。

 岸田文雄政調会長は17日の記者会見で、「4項目の実現を総裁任期中(3年間)にめどはつけたい」と踏み込んだ。ただ、国会で他党との議論はほとんど進んでいない。18日の日本記者クラブでの討論会で「何を根拠におっしゃったのか」と問われると、岸田氏は「ぜひ努力をしたい」とトーンダウンした。

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自民党ホームページより。総裁選4候補の「所見」も載っている

 野田聖子幹事長代行は改憲について、岸田氏同様に「所見」で触れない上に、発言も抑え気味で一貫している。17日の記者会見では「憲法のこういうところが自分たちの暮らしや地域社会、自治体と抵触するんだということを聞き出すのも自民党の仕事でないか。項目にこだわらず、広く憲法改正について国民の意見をいただきたい」と語った。

 逆に、改憲を最も具体的に語るのは高市氏だ。17日の記者会見では、4項目で特に緊急事態対応を重視するとし、「今の感染症もそうかもしれないが、大規模災害、テロといった状況が発生した場合に、一定の制限がなければ国民の命を守りきれない」と語った。

 コロナ感染拡大も引き合いに緊急事態対応が重要だと訴える高市氏の姿勢は、安倍路線を継いだ菅義偉首相に通じる。総裁選の「所見」に「新しい日本国憲法を制定」と掲げ、安倍氏からは全面的な支持を受けており、積極的な改憲路線を引き継いだと言える。

 ただ4候補間のやり取りは低調だ。18日の討論会で、まずコロナ対策を問われた後の各候補同士の質疑で改憲の話は出ず、年金やエネルギー、子育てが主だった。みな党の改憲4項目に異論は唱えないが、どの項目から他党に呼びかけて実現へ向かうかという各論は深まらない。

 29日に新総裁が決まれば、迫る衆院選自民党の公約作りが本格化する。コロナ禍への安倍・菅両政権の対応の是非も問われる衆院選で、安倍氏がこだわってきた改憲がどこまで党公約で強調されるのか。総裁選での4候補の戦いぶりが影響しそうだ。(編集委員・藤田直央

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