着床前検査で「流産率低下」 産科婦人科学会が発表、課題指摘の声も
日本産科婦人科学会(日産婦)は23日、体外受精で得られた受精卵のすべての染色体の数を調べ、異常のないものを子宮に戻す「着床前検査」の有効性を調べる臨床研究の中間報告を発表した。通常の体外受精に比べて流産率が下がったという。
受精卵は染色体が1本多かったり少なかったりすると、子宮に着床しにくくなったり、着床しても流産したりする可能性が高くなる。こうしたことは年齢が上がるほど、起きやすくなるとされる。
欧米では広がり 有効性ははっきりせず
このため、染色体の数に異常のない受精卵を選べば、理論上は妊娠、出産しやすくなると期待され、欧米では着床前検査が広がっている。だが、有効性ははっきりしていない。
国内では日産婦が2020年から、効果を検証する臨床研究をはじめた。①流産を2回以上経験②体外受精に2回以上連続して失敗③夫婦いずれかに染色体の構造異常がある、の三つのケースのいずれかに該当するカップルを対象に、年末までの予定で、全国109カ所の医療機関で実施されている。
この日開いたシンポジウムで、7月までに参加した4348人の解析結果を公表した。それによると、受精卵を子宮に戻せた人で妊娠に至ったのは66・2%で、このうち流産したのは9・9%だった。年齢による大きな差はみられなかった。日産婦の2019年の集計によると、通常の体外受精で受精卵を子宮に戻した人の妊娠率は33%で、流産率は25%。日産婦は検査について、「流産を繰り返すことによる精神的・身体的負担を減らす効果が期待できる」とした。
ただし、今回の結果では4348人のうち63・4%の人は、染色体の数に異常があるなどの理由で受精卵を子宮に戻すところまで進めなかった。日産婦は、検査を受けることで最終的に出産率が上がるかどうかはわからないとしており、今後も研究を続ける。
受精卵にダメージ ダウン症など排除にも懸念
この検査には期待の一方で、課題もある。
検査の過程で、受精卵から将…