「運命だったのかな」煙充満のトンネル、2人の勇気が同郷の命救った

国方萌乃
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 事故を起こし、トンネル内で炎上する車の中で動けなくなっている運転手を、和歌山県内の会社員の男性2人が助け出した。海南署は勇気ある行動をたたえ、2人に感謝状を贈った。

 署によると、事故があったのは9日午前6時半ごろ。50代の会社員男性が運転する車が和歌山市毛見にある新毛見トンネルの南側入り口付近で縁石に乗り上げた。車体は回転しながら20メートルほど転がり、トンネル内でとまった。

 海南市の会社員宮本康雄さん(39)は車で出勤中、車の横を通りかかった。車体はぼこぼこで、進行方向と逆を向いていた。運転席の男性が目をつぶり、ぐったりしているのが見えた。

 近くに車をとめて様子を見に行くと、車のエンジン付近から火が出始めていた。「おっちゃん、動けるか」。ドアを開けて声をかけると、「動けない」の返事。男性の両脇に手を入れ、急いで車から引きずり出した。

 そこに、湯浅町の会社員駒方章二さん(43)が駆け寄った。駒方さんも車で出勤中で、トンネルにさしかかった時、「3台ぐらい前を走っていた車が宙に浮くのが見えた」。車をとめ、通報した後、現場まで走って戻ってきた。

 宮本さんが男性の両脇を、駒方さんが足を持ち、約180メートル先のトンネル北側の出口に向かった。

 トンネル内には車の火災の影響で煙が充満していた。「体勢を低く」。駒方さんは元自衛隊員。その経験から宮本さんに声をかけて外を目指した。煙をあまり吸わずにすんだ。署は「いい判断だった」とたたえる。

 出口付近では、通報を受けた海南署員も駆けつけ、男性をトンネルから外に運びだした。男性はその後救急車で搬送された。腰の骨を折るなどの重傷を負っていたが、命に別条はなかったという。

 署は17日、「危険が伴う中、正しい知識で尊い命を救ってくれた」と2人に感謝状を贈った。贈呈式で、駒方さんは「僕らが救助している間、となりの車線を車が素通りしていった。自分の大切な人だったらどうするのかと思い、悲しかった」と振り返った。宮本さんは「助けられてよかった。運転手と駒方さん、僕も有田出身。助ける運命だったのかな」と話した。(国方萌乃)