礼に始まり礼に終わる 智弁和歌山の優勝シーンが問いかけるもの

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 東京オリンピック(五輪)・パラリンピックをはじめ、コロナ下でも国内外の多くの大会が行われた今夏のスポーツシーン。慶大野球部の福井章吾主将に先日、印象に残った場面を聞く機会があった。

 「東京五輪の日本柔道です。勝っても負けても表情を崩さない。金メダルを決めても、試合場を去るまで喜ばない姿に感動しました」

 日本発祥の柔道は礼を重んじ、相手を尊重して敬意を払う気持ちを大切にする。

 そんな武道精神は、日本の学生野球にも取り入れられている。試合前と試合後に両校が整列し、あいさつをするスタイルは、日本で生まれたものだ。

 その意味を改めて考え、実践したのが、第103回全国高校野球選手権大会で優勝した智弁和歌山だった。決勝で勝った直後に、歓喜の輪をつくらなかったのを記憶している人も多いだろう。

 「礼に始まり、礼に終わるのが高校野球だよな」

 中谷仁監督(42)が選手にそんな話をしたのは7月。和歌山大会の決勝前日だった。「明日はうちが勝つのは間違いない」と選手に暗示をかけるように言った上で、「その後のことを考えようや」と問いかけたという。

 決勝まで勝ち上がってきた素晴らしいライバルに、敬意を表するにはどうすればいいか。あいさつのために整列しているのを待たせて、大喜びするのはどうなのだろうか。

 また、コロナの状況下で大会を開催してくれたことに感謝し、最後まで感染対策を徹底して密状態をつくらないことも大切ではないか。

 智弁和歌山の選手たちは話し合い、和歌山大会で優勝を決めても、派手に喜ばず、あいさつのために整列した。

 その姿勢を甲子園でも貫いた。ガッツポーズをしたり、抱き合ったりしたのは、校歌を斉唱した後だった。

 若者らしく、素直に喜びを表現することを否定するつもりはない。ただ、優勝したらマウンド付近に集まるのが当たり前になったことを、疑問に感じる人もいた。ぼくもその1人だ。

 智弁和歌山の優勝シーンをどう感じたか。自分たちなら、どうするか。全国の球児たちも話し合って欲しい。柔道の創始者・嘉納治五郎は、「乱取り(練習)」とともに「問答」が大切だと説いている。(編集委員・安藤嘉浩