SDGsを「大衆のアヘン」にしない 国谷裕子さんと稲場雅紀さん

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構成 編集委員・北郷美由紀
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2030 SDGsで変える

 私たちは貧困を終わらせることができる最初の世代で、地球を救う機会を持つ最後の世代――。世界の首脳が国連本部に集まり、全会一致でSDGs(持続可能な開発目標)を採択してから25日で6年。コロナ禍による停滞や後退に加えて懐疑的な目もあるなか、どう立て直していけばいいのか。NGOの立場からかかわり続けている稲場雅紀さんに、国谷裕子さんが聞きました。

コロナ禍で世界の脆弱が浮き彫りに

 国谷 世界的なコロナ危機で世界がいかに脆弱(ぜいじゃく)だったのか、浮き彫りになりました。貧困や飢餓の改善が後戻りしてSDGsに逆風が吹いています。

 稲場 どうしてSDGsが必要なのか、コロナ禍で本当にわかったとも言えます。ウイルス感染の原因とされる生物多様性の損失、重症化を招く生活習慣病や大気汚染による肺疾患、どれもSDGsに書かれている課題です。脆弱性を克服し、回復力を再強化するためには、課題を包括的に解こうとするSDGsが適しています。

 国谷 日本政府には省庁のタテ割りを超えた政策づくりを進め、統合的に取り組む動きが足りません。対照的に目立っているのが、企業の取り組みです。

 稲場 生産と消費をつかさどる企業が変わらない限り、SDGsは達成できません。環境、社会、企業統治の取り組みを評価するESG投資もあり、変わってきました。脱炭素路線も確立しました。けれども健康や労働、人権への取り組みは遅れています。肥満や生活習慣病につながる食生活や、アルコール依存症の背景には、活発な企業の活動があります。

 国谷 新しいビジネスモデルで雇用を生み出しても労働環境が劣悪だったり、ワクチン製造で特許権が放棄されず、途上国への供給が滞っていたりします。

 稲場 一方でいいことをしていても、他方でよくないことをしていれば、偽りだという話になります。SDGsの価値を考えたときに、これが一番の問題です。

 国谷 経済思想家の斎藤幸平さんが、SDGsは危機から目をそむけさせる現代版「大衆のアヘン」だと指摘して、その言葉が独り歩きしている気がします。

 稲場 それはSDGsをうた…

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