米国、なりを潜めた強硬姿勢 対中政策、緊張緩和を探る背景は

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ワシントン=青山直篤、園田耕司 ワシントン=園田耕司、北京=冨名腰隆
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 日米豪印4カ国(クアッド)の首脳会議は、先端技術などの分野での中国との競争を意識した連携を強く打ち出すものとなった。一方で、中国を必要以上に刺激しないようにする動きもあり、米中関係に変化の兆しが出始めている。

 「世界観と未来のビジョンを共有する民主国家のグループ」。バイデン大統領は24日の会議冒頭、クアッドをそう位置づけた。

 名指しは避けたが、バイデン氏が「世界観」を共有しない国として念頭に置くのが中国であることは明らかだ。中国との競争では、経済的な手段で相手国の弱体化を図ったり、逆にそうした意図を食い止めたりする「経済安全保障」の重要性が高い。今回の会議でも、この側面での連携が強く打ち出された。

 中国は巨大な人口によるデータの力と強権的な統治手法を組み合わせて、人工知能(AI)や高速通信規格「5G」、バイオなどの先端技術を発展させてきた。これに対し、首脳会議で採択した日米豪印原則では、民主的価値と普遍的人権の重視や、信頼に基づく物資の供給を正面から掲げた。貿易制限などの経済安保上の攻勢や、AIなどを駆使した少数民族の抑圧が指摘される中国を牽制(けんせい)する意図が見える。

 AIや5Gの基盤となる半導体の供給網の強化や、技術の主導権を左右する国際標準づくりでの連携も表明。異なる企業の通信機器を組み合わせて使うことができるのが特徴で、日本企業も強みを持つ新規格「オープンRAN」の開発協力も進める。5G普及の多様化を掲げ、中国の通信機器大手、華為技術ファーウェイ)への対抗も図った。

 また、非加盟の米国、インドも交えて環太平洋経済連携協定(TPP)についても議論し、米国がアジア太平洋の通商秩序形成に関心を失ったわけではないとのメッセージは示した。米国がTPPに早期に復帰する見込みはないが、米政権内では、米国が主導できる形での多国間の通商秩序の構想を打ち出すべきだとの声も上がり始めている。

 一方、関係者の間で注目を集めているのが、米英豪の安全保障の新たな枠組み「AUKUS(オーカス)」とクアッドとの連携だ。クアッドは非軍事である一方、AUKUSは軍事協力の性格が強い。しかし、モリソン豪首相は会談後、記者団に対し、AUKUSとクアッドとの関係について「両者は相互に強化し合う」と語り、相乗効果が期待できるとの見方を示した。

 とくにAUKUSが最初に取り組む豪州への原子力潜水艦技術の供与については、日本なども歓迎。豪州の潜水艦の行動範囲が広がり、南シナ海などで軍事拠点化を進める中国に対する抑止力が上がると期待しているからだ。クアッドは今回の共同声明で、中国を念頭に「東シナ海南シナ海を含む海洋秩序への挑戦に対処する」と明記した。

 マイケル・グリーン元米NSCアジア上級部長は「強力な海軍力をもつ四つの民主主義国家が協力すればインド太平洋地域が安定する。中国や他国に対し、簡単に支配できないということを認識させることになる」と語る。

 ただ、クアッドの中で、インドは唯一、米国の同盟国ではない。インドは米国との関係を強めつつも、分野によって連携相手を使い分けることで国益を最大化する「戦略的自立性」を追求。対中国をにらんだクアッドの政策はインドの独自路線にも合わせることになる。「対中包囲網」とみられることに慎重な姿勢を取る。インドへの配慮もあり、前回の3月の会議に引き続き、中国への直接的な批判は声明には盛り込まれなかった。(ワシントン=青山直篤、園田耕司

米国の対中政策に変化の兆しか

 今回の首脳会議は、米軍のアフガン撤退をめぐる大混乱やフランスとの確執で、同盟国からの信頼が低下するというバイデン政権として最も弱り切っているさなかに行われた。初の対面形式となる今回の会議で、米国のアジアシフトを国際社会にアピールできる機会といえた。

 だが、露出は抑制的だった…

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